top of page
  • 8 時間前
  • 読了時間: 14分

令和8年7月27日判決言渡


令和8年(行ケ)第10008号 審決取消請求事件


口頭弁論終結日 令和8年5月20日


判 決


原 告 X


同訴訟代理人弁護士 渡 邊 律


同訴訟代理人弁理士 福 田 信 雄


被 告 アルファクール インターナショナル ゲゼルシ


ャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング


同訴訟代理人弁護士 松 永 章 吾


同 丸 山 悠


同訴訟代理人弁理士 前 川 砂 織


同 大 倉 桂 子


主 文


1 原告の請求を棄却する。


2 訴訟費用は原告の負担とする。


事 実 及 び 理 由


第1 請求


特許庁が無効2025-890027号事件について令和7年12月9日にした審決を取り消す。


第2 事案の概要


1 本件は、登録商標の商標登録無効審判請求について、特許庁が当該登録商標を無効とした審決の取消しを求める事案であり、争点は、当該登録商標の商標法4条1項7号該当性である。2 特許庁における手続の経過等


5 ⑴ 原告は、登録商標(登録第6680828号、令和4年5月16日登録出願、令和5年3月15日設定登録。以下「本件商標」という。)の商標権者である。


⑵ 被告は、本件商標について、商標登録無効審判請求をし、特許庁は、これを無効2025-890027号事件として審理した。


⑶ 特許庁は、令和7年12月9日、本件商標は商標法4条1項7号に該当するとして、本件商標を無効とする審決(以下「本件審決」という。)をし、その謄本は、同月19日、原告に送達された。


⑷ 原告は、令和8年1月15日、当庁に対し、本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起した。3 本件商標は、別紙「商標目録」記載のとおり、「Alphacool」の欧文字を標準文字で表して成り、指定商品を、第9類の区分に属する「コンピュータ周辺機器(コンピュータハードウエアを含む。)、コンピュータ・グラフィックカード・マザーボード・プロセッサー・電子回路及び他のコンピュータ構成部品の冷却用装置(コンピュータの冷却用の水の冷却用装置を含む)」等とする商標である。4 引用商標は、別紙「引用商標目録」記載1から3までのとおりであり(以下、順に「引用商標1」の要領で表記し、併せて「本件引用商標」という。)、引用商標1は、比例記号である「∝」様の青色の図形の右側に同色の「OOL」の欧文字を配して成り、引用商標2は、「COOL」が青色の「alphaCOOL」の欧文字を横書きにして成り、引用商標3は、「ALPHACOOL」の欧文字を横書きにして成る商標である。5 本件審決の理由の要旨


⑴ 被告は、「コンピュータ用冷却装置」を始めとした「コンピュータ周辺装置」(以下「被告商品」という。)に本件引用商標を使用している。そして、被告商品が、本件商標の登録出願時及び登録査定時におけるウェブサイトの


5 記事において、「Alphacool」の名称により、「世界的に著名」で「日本でもファンが多い」などと紹介されていることや、被告商品は日本国内において一定程度の売上げがあることからすると、本件引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、被告商品を表示するものとして、需要者の間に広く認識されているとまでいえないものの、一定程度は知られているといえる。


⑵ 本件商標と引用商標2及び3は、いずれも特定の観念を生じず、観念において比較し得ないものの、構成文字を共通にすることから、外観において近似した印象を与え、称呼(アルファクール)において共通するのであって、類似する商標というべきである。また、被告商品が「Alphacool」の名称により紹介され、本件引用商標が需要者の間に一定程度知られていることからすると、引用商標1の構成中の前半部分は「α」の文字と「C」の文字をデザイン化して表したもので、全体として「αCOOL」の文字をデザイン化して表したものと理解され、そうすると、本件商標と引用商標1は、いずれも特定の観念を生じず、観念において比較し得ないものの、後半部分の「cool(COOL)」の構成文字を共通にすることから、外観において近似した印象を与え、称呼(アルファクール)において共通するのであって、類似する商標というべきである。


⑶ 原告は、令和元年10月13日から令和6年8月6日までの間、本件商標に係るものを含め80件もの登録出願(以下「原告出願」という。)をしているところ、原告出願に係る商標の多くは造語から成るものであるにもかかわらず、他人が使用している商標と同一又は類似のものが多数存在し、その中には「dyson」、「roomba」、「xiaomi」等の有名な商標も含まれる。また、原告出願に係る商標のうち、商標登録されているものは48件であるのに対し、登録異議の申立て又は無効審判の請求がされてい


5 るものは合わせて16件であり、その割合は約33%であって、登録商標に対する年間の登録異議の申立て又は無効審判の請求の割合(約0.5%)に比し極めて高い。そうすると、原告は、他人が使用している商標を意図的に集めて、数年の間に大量の登録出願をし、その一環として、本件商標につき登録出願をしたというべきである。


⑷ 以上のとおり、原告は、他人が使用している商標を意図的に集めて、数年の間に大量の登録出願をし、その一環として、被告商品を表示するものとして需要者の間に一定程度知られている本件引用商標と類似の本件商標について登録出願をしたといえる。そして、原告が平成27年から本件商標を使用していたことがうかがえるとしても、本件商標の登録出願時において、本件引用商標が被告商品を表示するものとして需要者の間に一定程度知られていることを踏まえると、本件商標について登録出願をした原告の行為は、他人の商標を剽窃する一環として被告の商標を剽窃し、被告による本件引用商標の使用を妨害する、又は本件引用商標の信用等に便乗するものといえ、これは、本件商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ない場合に該当する。そうすると、本件商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標というべきであるから、商標法4条1項7号に該当する。


第3 審決取消事由に関する当事者の主張



(原告の主張)


⑴ 原告は、平成24年頃、広く使用され汎用性の高い「Alpha」の語と


「Cool」の語を組み合わせて、独自に「Alphacool」(本件商標)との造語を創造し、コンピュータ周辺機器等について、その使用を開始した。原告が周知性のない本件引用商標に接する可能性はないし、仮に外国


5 企業である被告の存在を認識し得たとしても、本件商標が広く使用され汎用


性の高い語を組み合わせたものであることからすると、原告が本件引用商標を模倣し、被告のブランドの信用等にただ乗りする目的で、本件商標を採択したと推認することはできない。


⑵ 本件審決は、原告出願の経緯から、原告は、他人が使用している商標を意


図的に集めて、数年の間に大量の登録出願をし、その一環として、本件商標につき登録出願をしたと推認するが、原告出願のうち、登録異議の申立てによる取消決定が確定したものは3件、無効審判の請求による無効の審決が確定したものは2件と僅少であるし、そもそも、原告出願の経緯から本件商標の登録出願の経緯の悪性を判断するのは、他事を考慮し原告の属性をもって本件商標を無効とするもので、それ自体不合理である。さらに、原告出願の大部分は本件商標の登録出願後のものであり、これをもって、遡及的に本件商標の登録出願時における原告の主観的意図を推認するのは論理的に飛躍がある。


⑶ いずれにせよ、原告が、他人の使用している商標を意図的に集めて、数年


の間に大量の登録出願をしている事実はない。本件において、本件引用商標の剽窃、妨害、便乗等の危険性を想定し得るほどの看過し難い具体的事実も、本件商標に係る商標権の譲渡、売却等の申入れ等の顕著な悪性の徴表たる具体的事実もなく、本件商標は商標法4条1項7号に該当しない。2


(被告の主張)


⑴ 本件において、① 原告が、令和元年10月13日から令和6年8月6日


までの間に、本件商標に係るものを含め80件もの登録出願(原告出願)をしていること、また、原告出願に係る商標のほとんどが造語であるにもかかわらず、その多くは他人が使用している商標と同一又は類似の商標であり、当該他人による使用に遅れて登録出願がされていること、さらに、原告出願に係る商標の指定商品又は指定役務に一貫性はなく、原告の事業内容との関


5 連性もないこと、② 原告出願のうち、38件については拒絶査定がされ、


登録が取り消され、又は無効とされていること、また、原告出願のうち、16件について登録異議の申立て又は無効審判の請求がされていること、③原告が、令和5年5月22日、被告商品の日本における販売代理店である株式会社サーフゲイト(以下「被告販売代理店」という。)に対し、「Alphacool」の表示を付してPC用冷却装置及びその付属品を販売する行為は、本件商標に係る商標権の侵害であり、差止請求や損害賠償請求の対象となるのみならず、刑事罰の対象になる旨の警告をし、「Alphacool」の表示の使用の中止等を要求していることからすると、原告が、他人の使用している商標を意図的に収集し、数年の間に大量に登録出願をしていることは明白である。本件商標は、原告が、剽窃的な商標登録出願の一環として、被告のブランドの信用、名声、顧客吸引力等にフリーライドするという不正な目的の下、登録出願されたものであり、その登録を維持するのは公序良俗に反することから、商標法4条1項7号により無効とされるべきである。


⑵ 原告は、平成24年頃に本件商標の使用を開始した旨の主張をするが、原


告は、本件商標につき登録出願をする際、特許庁に提出した「早期審査に関する事情説明書」(以下「本件事情説明書」という。)において、令和3年5月から本件商標を使用していたと説明しているのであり、信用できない。原告は、本件引用商標に接する可能性はない旨の主張もするが、本件審決においても、本件引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、「コンピュータ周辺装置」を表示するものとして需要者の間に一定程度知られていたとされている上、被告が、2004年(平成16年)2月23日、ドイツにおいて、文字商標「Alphacool」につき登録出願をし、同年6月2日に登録査定を受け、同年7月2日にその情報が公開されていることや、被告が、2018年(平成30年)8月13日、文字商標「Alp


5 hacool」につき欧州連合商標の登録出願をし、同年12月5日に登録


を受け、同月6日にその情報が公開されていることからすると、原告が本件引用商標に接する可能性は十分にある。


第4 当裁判所の判断


1 掲記の証拠(証拠については枝番号を含む。)及び弁論の全趣旨によれば、次の各事実が認められる。


⑴ア 本件引用商標は、比例記号である「∝」様の青色の図形の右側に同色の「OOL」の欧文字を配して成り(引用商標1)、「COOL」が青色の「alphaCOOL」の欧文字を横書きにして成り(引用商標2)、「ALPHACOOL」の欧文字を横書きにして成る(引用商標3)商標である。イ 被告は、2010年(平成22年)の設立当初から、被告商品である「コンピュータ周辺装置」について本件引用商標を使用し、平成28年頃から現在に至るまで、日本国内においても、インターネットを通じ被告商品を販売するなどして、相当程度の売上高を上げている(甲3~43、甲88)。ウ 被告商品について、平成31年1月28日付けのウェブサイトの記事には、「ドイツに本社を構える老舗のDIY水冷メーカー、Alphacool international gmbhが登場。」、「水冷メーカーとしては世界的に著名なAlphacoolのDIY水冷キットです。」との記載(甲3)が、同月9日付けのウェブサイトの記事には、「ドイツの水冷パーツメーカーAlphacoolは、数多くの水冷パーツをラインナップし、カスタマイズの幅が広いことから日本でもファンが多い。」との記載(甲6)がある。


⑵ア 本件商標は、「Alphacool」の欧文字を標準文字で表して成り、指定商品を、第9類の区分に属する「コンピュータ周辺機器(コンピュー


5 タハードウエアを含む。)、コンピュータ・グラフィックカード・マザーボード・プロセッサー・電子回路及び他のコンピュータ構成部品の冷却用装置(コンピュータの冷却用の水の冷却用装置を含む)」等とする商標である。イ 原告は、令和4年5月16日、本件商標について、登録出願(商願2022-60708)をするとともに、同日、本件商標を令和3年5月から使用しているので早期審査制度を利用する旨の記載をした本件事情説明書を提出し、特許庁は、令和4年7月25日頃、原告に対し、本件商標の登録出願を早期審査の対象としない旨の通知をした(甲1、乙5)。ウ 原告は、本件商標について、令和5年2月13日に登録査定を、同年3月15日に設定登録を受けた。本件商標に係る商標掲載公報の発行の日は、同月24日である。(甲1)エ 原告は、被告販売代理店に対し、令和5年5月22日差出に係る内容証明郵便により、被告販売代理店が「Alphacool」や「Noctua」の文字を表記してPC用冷却装置及びその付属品を販売する行為は、原告の本件商標等に係る商標権を侵害し、差止請求や損害賠償の対象となるのみならず、刑事罰の対象となるおそれもあるとして、商品への「Alphacool」及び「Noctua」との表記の速やかな中止を求めるとともに、将来にわたって本件商標等に係る商標権の権利範囲内における「Alphacool」及び「Noctua」との表記使用の中止を求める旨の通知(以下、この通知に係る書面を「本件通知書」という。)をした。本件通知書には、「本件につきまして、誠意ある対応が無い場合には、誠に遺憾ながら法的措置にて解決を図ることにもなりかねませんので、ご失念無きよう申し添えます。」との記載がある。(乙10)


⑶ア(ア) 原告は、別紙「商標登録出願一覧表」記載のとおり、令和元年10月13日から令和6年8月6日までの間に80件(本件商標に係るものを


5 含む。以下同じ。)、令和元年10月13日から令和4年5月16日(本件商標の登録出願日)までの間に14件の登録出願(原告出願)をしているところ、別紙「対比表」記載のとおり、その多くは、他人が使用をする商標と同一又は類似の商標について、他人の使用に係る時期に後れて登録出願をするものである。また、原告出願に係る商標の多くは造語から成るもので、その中には、中国の企業である「xiaomi」、掃除機の商標である「dyson」、「roomba」等の需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似する商標も含まれる。(乙1、乙7)(イ) 原告は、原告出願に係る商標中に需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似する商標が含まれることについて、「私(原告)は2012年~2013年の時点で既に『dyson/非球面メガネレンズ』…『Xiaomi/フッ素樹脂ドライタイプ潤滑剤』…『Roomba/自転車カバー…』といった商品を実際に取り扱い、販売しておりました。」、「近年のAmazonの規制強化により、『商標権がないと商品ページが作成できない』、『互換品や並行輸入品を継続販売するには商標登録が必要である』と私が誤認してしまい、販売継続のために出願したものです。」などと陳述(甲85)するが、その内容に照らし信用することはできない。イ 令和元年10月13日から令和6年8月6日までの間の80件の原告出願のうち48件について、また、令和元年10月13日から令和4年5月16日までの間の14件の原告出願のうち9件について、商標登録がされているところ、前者の48件のうち、9件について登録異議の申立てが、7件について無効審判の請求がされ、後者の9件のうち、2件について登録異議の申立てが、3件について無効審判の請求がされている。本件通知書に記載された商標「Noctua」についても、無効審判の請求がされ、特許庁は、令和8年3月3日、当該商標は商標法4条1項15号に該当す


5 るとして、商標登録を無効とする審決をしている。(乙1~4)2⑴ 前記認定事実によれば、本件引用商標は、本件商標の登録出願時(令和4年5月16日)及び登録査定時(令和5年3月15日)において、被告商品である「コンピュータ周辺装置」を表示するものとして、需要者の間に少なくとも一定程度は知られていたものといえる。また、本件引用商標のうち引用商標1は「αCOOL」の文字をデザイン化して表したものと理解され、そうすると、本件商標と本件引用商標とでは、引用商標1を含め、いずれも特定の観念を生じず、観念において比較し得ないものの、称呼(アルファクール)において共通し、外観において近似するものであるから、類似の商標というべきである。そして、① 上記のとおり、本件引用商標は、本件商標の登録出願時(令和4年5月16日)及び登録査定時(令和5年3月15日)において、被告商品である「コンピュータ周辺装置」を表示するものとして、需要者の間に一定程度知られていたこと、② 原告が、本件商標の設定登録を受けた後、商標掲載公報の発行の日(令和5年3月24日)から2か月以内(同年5月22日)に、被告販売代理店に対し、本件引用商標の使用の中止及び誠意ある対応を求める本件通知書を差し出していること、③ 原告は、本件商標の登録出願前から、コンピュータ周辺機器等について、本件商標を使用していた旨の主張をすることを踏まえると、原告において、被告が被告商品を表示するものとして本件引用商標を使用していることを知らなかったというのは不自然というべきであり、かかる事情に加え、前記1⑶の原告出願の状況をも併せ考慮すると、本件において、原告は、被告が被告商品を表示するものとして本件引用商標を使用していることを認識しながら、被告による本件引用商標の使用を妨害し、あるいは、本件引用商標の信用等に便乗する目的で、殊更に本件商標の登録出願をしたものと推認され、そうすると、本件商標は、その登録出願の経緯に照らし、社会的相当性を欠くものがあり、登録を認め


5 ることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないものとして、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当するというべきである。⑵ 原告は、平成24年頃から本件商標を使用していたのであり、原告において周知性のない本件引用商標に接する可能性はない旨の主張をし、これに沿う証拠(甲78~84)はあるが、本件事情説明書には、本件商標につき「令和3年5月から使用中」と記載されていることに照らすと、上記証拠は採用できず、他に原告が平成24年頃から本件商標を使用していたことを認めるに足りる証拠はない。また、原告は、原告出願のうち、登録異議申立てによる取消し又は無効審判の請求による無効の審決が確定した件数は僅少であり、本件商標の出願登録に悪性はない、原告出願の状況により、遡及的に本件商標の登録出願時における原告の主観的意図を推認するのは論理的に飛躍がある旨の主張もするが、かかる主張を踏まえても、前記判断は覆らない。


3 以上によれば、本件商標は、商標法4条1項7号に該当するというべきであり、本件商標を無効とした本件審決の判断に誤りはない。


第5 結論


よって、原告の請求は理由がないから、これを棄却することとして、主文のとおり判決する。知的財産高等裁判所第2部


裁判長裁判官


森 冨 義 明


裁判官


菊 池 絵 理


裁判官


天 野 研 司

 
 
 

コメント


bottom of page