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原告
株式会社ケイジェイシー
同訴訟代理人弁護士
正畠大生
同訴訟代理人弁理士
伊藤信和
被告
特許庁長官
同指定代理人
馬場秀敏
同
板谷玲子
同
阿曾裕樹
主文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求
特許庁が不服2023-10435号事件について令和7年10月16日にした審決を取り消す。
第2 事案の概要
本件は、商標出願の拒絶査定に対する不服審判請求を不成立とした審決(以下「本件審決」という。)の取消訴訟であり、争点は、本件審決の商標法3条1項3号該当性及び同条2項所定の要件の具備に係る各判断の当否である。
1 特許庁における手続の経緯等(当事者間に争いがない)
⑴ 原告は、令和4年6月27日、指定商品を、第8類の区分に属する「乳児用及び子供用の食卓用フォーク、フォーク」とする別紙「商標目録」記載の立体的形状からなる商標(立体商標。以下「本願商標」という。)について、商標登録出願(商願2022-73752)をしたところ、令和5年3月16日付けで拒絶査定を受けたことから、同年6月22日、拒絶査定不服審判の請求をするとともに、手続補正書を提出して、本願商標の指定商品を、第8類の区分に属する「乳児用及び子供用の食卓用フォーク」(以下「本願指定商品」という。)に補正した。
⑵ 特許庁は、上記請求を不服2023-10435号事件として審理した上、令和7年10月16日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との本件審決をし、その謄本は、同月28日、原告に送達された。
⑶ 原告は、令和7年11月27日、当庁に対し、本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起した。
2 本件審決の理由の要旨
⑴ 商標法3条1項3号該当性について
本願商標は、立体商標であり、全体的に厚みのある太い柄で、柄にくびれ部分を有し、4本のフォークヘッドの各指に凹凸が形成されている立体的形状からなるものである。
そして、本願指定商品の業界において、全体的に厚みのある太い柄になっていたり、柄にくびれ部分を有するなどの握りやすい形状になっていたり、フォークヘッドの指が4本であったり、各指に凹凸が形成されている形状を有していたりするフォーク(乳幼児用・子供用のものを含む。)が取引されている実情を踏まえて本願商標の立体的形状を考察すると、当該形状は、本願指定商品に採用し得る形状の一形態を表したものと容易に認識されるもので、これに接する需要者が、その商品の機能又は美感上の理由による形状の選択と予測し得る範囲のものであって、商品の機能又は美感に資することを目的して採用されたものといえる。
そうすると、本願商標を本願指定商品に使用しても、これに接する需要者は、その商品に採用し得る形状の一形態を表したものとして理解するにとどまり、自他商品を識別するための標識としては認識し得ないというべきであるから、本願商標は、商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標に該当する。
⑵ 商標法3条2項所定の要件の具備について
立体的形状からなる商標が使用により自他商品の識別力を獲得したか否かは、当該商標の形状の斬新性、当該形状に類似した他の商品の存否、当該商標の使用開始時期及び使用期間、使用地域、商品の販売数量、広告宣伝のされた期間、地域及び規模等の諸事情を総合考慮し、立体的形状が需要者の目につき易く、強い印象を与えるものであったかなどを総合勘案して、当該形状が独立して自他商品の識別力を獲得するに至っているか否かを判断するのが相当である。
そして、① 本願商標の使用期間、本願商標の立体的形状を有する商品(以下「本件商品」という。)の販売数量を裏付ける資料は限定的なものであり、これらを客観的に評価し得るものでないこと、② 雑誌、テレビによる広告宣伝は、それぞれ各1媒体のみであり、本件商品が各種ウェブサイトで紹介され、大規模な展示会において、多数の商品の一つとして本件商品が取り扱われていたというのみでは、本願商品が商品の出所を表示する商標として需要者の間に広く認識されていたといえないこと、③ 本件商品のフォークの柄及びパッケージには、「EDISON」又は「EDISOnmama」の記載(刻印)があり、本件商品はパッケージされた状態でブランド名の文字と共に使用され、需要者は、ブランド名の文字を含めて、同業他社の商品と区別していて、本願商標の立体的形状が需要者の目につき易く、強い印象を与えるものであったとはいえないことからすると、原告が本願商標を本願指定商品に使用した結果、本願商標の立体的形状が独立して自他商品の識別力を獲得するに至っているとはいえず、したがって、本願商標を、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるものとは認められない。
3 原告主張の審決取消事由
⑴ 商標法3条1項3号該当性に係る判断の誤り(取消事由1)
⑵ 商標法3条2項所定の要件の具備に係る判断の誤り(取消事由2)
第3 当事者の主張
1 取消事由1(商標法3条1項3号該当性に係る判断の誤り)について
(原告の主張)
⑴ 本件審決は、本願指定商品の業界における取引の実情を踏まえて考察すると、本願商標は商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標に該当するとする。
しかしながら、本件審決の引用するレック株式会社の商品(以下「レック社商品」という。)が全体として本願商標と類似する立体的形状を有すること自体は首肯し得るものの、① 原告は、平成22年1月頃から本件商品の開発を進め、同月20日に本件商品のフォークヘッドの形状に関する実用新案登録出願をした上で、平成23年に本件商品の販売を開始したこと、②レック社商品の販売開始時期は、原告の実用新案権の存続期間が終了した令和2年1月20日の約1年半後である令和3年8月2日であることに照らすと、レック社商品は、本願商標の使用実績に「あやかり」、それに乗じて販売された商品であるといえ、レック社商品が取引されていることによって、本願商標の自他商品の識別力を否定すべきではない。
また、本件審決の引用する他の商品の立体的形状は、全体が一体不可分に組み合わさった形状に着目すると、本願商標の立体的形状と明らかに異なり、需要者は容易に本願商標の立体的形状と区別することができる。
⑵ フォークの形状は多種多様であり、形状選択には相当程度の自由度があることからすると、本願商標の立体的形状を、商品の機能上必然的な形状であるとも、市場における一般的な形状であるともいえず、本願商標は、商品の品質、形状を普通に用いられる方法で表示するものではない。
(被告の主張)
⑴ 本願商標は、厚みのある、くびれを有する太い柄に、内側に凹凸がある4本の歯を有するフォークヘッドを備える立体商標であり、一見してフォークの立体的形状を表してなるところ、フォークを持ちやすいようにするという機能を向上させる目的で、厚みのある太い柄を備えるフォークが広く製造、販売され、また、麺が滑り落ちにくく、食べやすいという機能を向上させる目的で、内側に凹凸のあるフォークヘッドを備えるフォークが広く製造、販売されているという取引の実情を踏まえると、本願商標の立体的形状は、持ちやすさや食べやすさという商品の機能を向上させる目的で、取引上普通に採用されている形状の範ちゅうのものにすぎず、客観的に見て、商品の機能に資することを目的として採用された形状又は機能若しくは美観上の理由による形状の選択として予測し得る範囲のものである。
⑵ 本願商標は、本願指定商品との関係において、商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であり、商標法3条1項3号に該当する。
2 取消事由2(商標法3条2項所定の要件の具備に係る判断の誤り)について
(原告の主張)
⑴ 本願商標は、① フォークヘッドと柄との接続箇所から少し離れた箇所で、正面及び側面から見て狭くなったくびれ部分を有する、② くびれ部分から後端までの柄は、腹側が緩やかな凸形状であり、背側が大きく膨らんだ凸形状である、③ フォークヘッドの指は4本であり、各指にU字状の2つの凹みが形成されているなどの特徴的な形状を有している。
本件商品については、平成23年以降、同一の形状を維持したまま、全国に展開する大手小売店においても販売されていて、本件商品の令和4年までの販売数量は約491万本に上り、平成28年から令和4年までの市場占有率(販売数量/出生者数)は、54%から76%までの間で推移し、電子商取引サイトのランキングにおいて、1位を含む高順位を獲得するなど、需要者から高い評価を受けている。本願商標は、原告が、平成26年4月から約1年間、全国ネットの番組でテレビCMを放送したり、令和4年3月15日発行の雑誌に本件商品の広告を掲載したり、令和元年9月12日、令和4年2月18日及び同年6月1日、インターネット上で本件商品につきプレスリリースをしたり、平成23年以降、多数の展示会に本件商品を出展したりして、本件商品の広告宣伝をすることにより、また、その形状の特徴により、何人の業務に係る商品であるかを認識し、理解することができるものになるに至ったといえ、実際、原告の依頼により実施したアンケート調査(以下「本件アンケート調査」という。)の結果によれば、本件商品の写真から原告のブランド名である「エジソンママ」を想起した者の割合は20.1%と、別のブランドを回答した者の割合(合計11.8%)や、レック社商品の写真から「エジソンママ」と想起した者の割合(8.6%)に比し、高くなっている。
⑵ 以上のとおり、本願商標は、使用により、自他商品の識別力を獲得したものであるから、商標法3条2項所定の要件を具備するというべきである。
(被告の主張)
⑴ 立体的形状からなる商標が使用により自他商品の識別力を獲得したか否かは、当該商標の形状、当該形状に類似した他の商品等の存否、当該商標が使用された期間、商品の販売数量、広告宣伝がされた期間及び規模等の使用の事情を考慮して判断すべきであるところ、本願商標については、① 本件商品の包装において、「じょうずに食べられる」、「溝がついて麺がすべり落ちない」、「握りやすい取っ手形状」などと、商品形状の機能的側面が強調されていることもあって、本件商品の構成部分はいずれも機能向上に寄与する形状であるとの印象を与え、どの形状が出所識別標識たり得る特徴であるのかは判然としないこと、② 本件商標と同様の、厚みのある太い柄を備え、内側に凹凸があるフォークヘッドを備えるフォークが広く流通しているという取引の実情を踏まえると、本件商品の形状は極めて独創性が低く、その形状のみにより出所を識別するの事実上困難であることからすると、需要者は、本願商標の形状を機能的な商品形状であると認識、理解するとしても、原告に係る出所識別標識たる特徴であると直ちに理解するとはいえない。
⑵ そして、本件において、① 原告の主張する、本件商品の販売個数や市場占有率を客観的に裏付ける証拠は提出されていないこと、② 本件商品につき、その形状が原告に係る出所識別標識たる特徴であることを積極的に強調する、一般的なメディアを用いた広告活動は確認できず、本件商品の広告宣伝がその認知度の向上に寄与する効果は限定的であること、③ 本件アンケート調査の結果によっても、本件商品の形状から原告との関連を想起できた者は2割程度にとどまり、本願商標の形状の認知度は低いこと、④ 厚みのある太い柄を備え、内側に凹凸があるフォークヘッドを備えるフォークが広く流通しているという取引の実情を踏まえると、本願商標の形状について、原告のみによる独占使用を認めるのは、機能を果たす目的でする形状の選択、採択の幅を不当に制限することになること、⑤ 原告の実用新案権の期間満了後、さらに商標権により、その独占使用を半永久的に延長するのは、事実上、保護期間を一定期間に限定する実用新案法の趣旨を超えて、本願商標のような形状について保護を与えることとなり、事業者間の公正な競争を不当に制限することになることを考慮すると、本願商標は、原告が本願指定商品に使用した結果、本件審決時において、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識できるものとはいえず、商標法3条2項所定の要件を具備しない。
第4 当裁判所の判断
1 商標法3条1項3号該当性について
⑴ 商標法3条1項3号は、商品の形状(立体的形状を含む。同法2条1項)その他の特徴を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標は、商標登録を受けることができない旨を定める。これは、このような商標は、商品の形状その他の特徴を表示する標章であって、取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものであるから、特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに、一般的に使用される標章であって、多くの場合、自他商品の識別力を欠き、商標としての機能を果し得ないものであることによるものと解される(最高裁昭和54年4月10日第三小法廷判決・裁判集民事126号507頁参照)。
また、商標法3条2項は、同条1項3号に該当する商標であっても、使用をされた結果、自他商品の識別力を有するに至ったものについては、商標登録を受けることができる旨を定め、その一方で、同法4条1項18号及び同号の委任を受けた商標法施行令1条の2は、商品が当然に備える立体的形状等の特徴のみからなる商標については、同法3条の規定により商標登録を受けることができる場合であっても、商標登録を受けることができない旨を定めるところ、これは、その立体的形状が、商品の機能との関係で不可欠なものであり、商品が当然に備える特徴である場合に、当該形状が自他商品の識別力を有するに至ったとして、商標登録を受けることができることとすると、当該商標の商標権者に、事実上、かかる立体的形状からなる商品の独占的な取引を認めることとなって、公益上適当でないことによるものと解される。
そして、上記の各条項に照らすと、当該商標が商標法3条1項3号に該当するというためには、商品が当然に備える立体的形状等の特徴のみからなる商標であることまで要するものではないというべきである。
また、立体的形状からなる商標が、指定商品との関係で、商標法3条1項3号に該当するか否かは、審決時(又は査定時)において、これが指定商品に使用された場合に、需要者によって、当該商品の形状その他の特徴を表示するものとして一般的に認識されるものであったか否かにより判断すべきところ、商品の形状は、多くの場合、当該商品に必要とされる機能や美観に資することを目的として選択されるもので、取引に際し何人もその使用を欲するものであるから、需要者から見て、当該形状が商品に必要とされる機能や美観に資することを目的として選択されたものと把握し得る範囲のものであれば、当該商標は、自他商品の識別力を有するものではなく、商品の形状その他の特徴を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものとして、商標法3条1項3号に該当するというべきである。
⑵ これを本件について見ると、本願商標は、別紙「商標目録」記載のとおり、① 全体的に厚みのある太い柄で、② フォークヘッドと柄との接続箇所から少し離れた箇所で、正面及び側面から見て狭くなったくびれ部分を有し、③ くびれ部分から後端までの柄は、その腹側が緩やかに膨らみ、その背側がやや大きく膨らんだ形状であり、④ フォークヘッドの歯は4本であり、各歯の内側にU字状の凹みが形成されている立体的形状からなるものである。
そして、本願指定商品は「乳幼児及び子供用の食卓用フォーク」であり、その需要者は一般の消費者であるところ、掲記の証拠(証拠については、枝番を含む。以下同じ。)及び弁論の全趣旨によれば、本件審決時において、厚みのある太い柄を有していたり(乙5~8、乙10~12)、柄にくびれ部分を有していたり(乙9、11、12)、フォークヘッドの歯が4本であったり、その内側に凹凸が形成されていたりする(乙5~8、乙12~18)、乳幼児ないし子供用のフォークは、レック社商品(甲3)のほかにも多数存在し販売されていたこと、また、上記商品(本件商品を含む。)を紹介するウェブサイトや、その包装には、「溝がついて麺がすべり落ちない」、「握りやすい取っ手形状」(甲24、乙19)、「握りやすい太めの立体グリップで持ちやすい。」、「フォークは…麺類が滑り落ちにくい凹凸形状をしています。」(乙5)、「太めの持ち手でしっかり手にフィットします。」(乙6)、「握りやすい太めの立体グリップ」、「麺が落ちにくい凸凹形状」(乙7)、「先端は麺が落ちにくい凸凹形状です。」(乙8)、「持ち手のあたりが、少しくびれのあるグリップ形状になっていて持ちやすいのが特徴です。」(乙9)、「麺類などが滑りにくい凹凸形状です。」、「持ち手部分が太めで、緩やかなカーブがあるので小さなお子様でも持ちやすく扱いやすいです。」(乙10)、「太めで波型のハンドルは、手にフィットしやすく…」(乙11)、「フォーク先は麺類がすべり落ちにくい凹凸形状。」、「…太めのグリップには、持ちやすいくぼみ…付き。」(乙12)、「刃の部分が特徴で…波型形状です。麺が落ちにくく…」(乙13)、「麺がからみやすくて食べやすい」(乙17)などとの記載があり、当該商品の形状が「握りやすさ」、「食べやすさ」という、その機能に資するものであることが明示されていることが認められる。
上記の事情を総合考慮すると、本願商標の立体的形状は、需要者において、当該形状が、商品に必要とされる機能に資することを目的として選択されたものと把握し得る範囲のものであると認められ、したがって、本願商標は、商品の形状その他の特徴を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものとして、商標法3条1項3号に該当するというべきである。
⑶ この点、原告は、本件商品の販売実績、実用新案登録出願の経緯、レック社商品の販売状況等に照らすと、本願商標は商標法3条1項3号に該当しない旨の主張をするが、原告の主張する事情はいずれも本願商標の同号該当性に係る判断を直ちに左右するものではない。
原告は、本願商標の立体的形状は商品の機能上必然的な形状でも、市場における一般的な形状でもない旨の主張もするが、立体的形状からなる商標の商標法3条1項3号該当性は、当該商標が指定商品に使用された場合に、需要者によって、当該商品の形状その他の特徴を表示するものとして一般的に認識されるものであったか否かにより判断すべきであること、そして、需要者から見て、当該形状が商品に必要とされる機能や美観に資することを目的として選択されたものと把握し得る範囲のものであれば、当該商標は、商品の形状その他の特徴を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものというべきであることは、上記⑴のとおりであり、本願商標の立体的形状が商品の機能上必然的な形状でないことや、市場における一般的な形状でないことにより、直ちに本願商標の同号該当性が否定されるものでもない。
原告の主張は、いずれも採用することができない。
2 商標法3条2項所定の要件の具備について
⑴ 前記1⑴の商標法3条2項の趣旨にかんがみると、商品の立体的形状からなる商標が、使用をされた結果、自他商品の識別力を有するに至ったか否かは、当該商標の形状及び当該形状に類似した他の商品の存否、当該商標が使用された期間、商品の販売数量、広告宣伝がされた期間及び規模等の使用の実情を総合考慮して判断するのが相当である。
⑵ これを本件について見るに、本願商標の形状や当該形状に類似した他の商品の存否は、前記1⑵のとおりである。また、掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば、本願商標の使用の実情について、次の各事実が認められる。
ア 原告は、平成23年に本件商品の販売を開始し、以降、本件審決時(令和7年10月16日)に至るまで、大手小売店等を通じて、その販売を継続している。本件商品の具体的な販売数量や市場占有率は、全証拠によっても明らかでないものの、本件商品は、複数の電子商取引サイトの売れ筋ランキングにおいて、1位を含む高順位を獲得するなど、乳児用品や子供用品の需要者から高く評価されている。(甲1、甲5~7、甲19、20、甲25~27)
イ 原告は、平成26年4月から約1年間、全国ネットの番組で週1回テレビCMを放送したり、令和4年3月発行の乳幼児の親を対象とする雑誌に広告を掲載したり、令和元年9月12日、令和4年2月18日及び同年6月1日、インターネット上でプレスリリースをしたりして、本件商品の広告宣伝をしている。また、原告は、「東京ギフト・ショー」、「東京おもちゃショー」などの展示会に本件商品を継続的に出展したりもしている。(甲13~18)
ウ 令和8年1月9日から翌10日にかけて、25歳から44歳までの男女のうち1歳から6歳までの子と同居する親1033人を対象として実施された本件アンケート調査の結果(甲22)によれば、本件商品の写真のみから、原告のブランド名(「エジソンママ」)又はメーカー名を回答した者は20.1%(これは全回答者に占める割合である。以下同じ。)であり、他社のブランド名等である「レック(LEC)」(レック社商品)と回答した者は0.4%、「ピジョン(Pigeon)」と回答した者は5.1%、「思い出せない/見たことはある/わからない」と回答した者は0.9%、「全くわからない」と回答した者は67.2%である。
また、本件商品の写真のみからは「全くわからない」と回答した者に対し、原告を含む10社のブランド名等と共に、「この中にない」、「わからない」との選択肢を示した場合において、原告のブランド名等を回答した者は4.6%であり、「レック(LEC)」と回答した者は0.0%、「ピジョン(Pigeon)」と回答した者は5.9%、「わからない」と回答した者は44.1%である。
⑶ 以上を踏まえて検討すると、本件商品が長期間にわたり継続して販売され、販売数量も相当程度に上ることや、原告が、本件商品について、各種メディアを通じ広告宣伝を行っていることは、上記⑵のとおりであって、これにより、本件商品が一定の範囲の需要者に認識され、高く評価されていることは認められるものの、本件商品の具体的な販売数量や市場占有率はなお明らかでなく、その広告宣伝の期間、規模も限定的なものにとどまること、そして、本件アンケート調査の結果によっても、本件商品の写真のみから、原告のブランド名等を回答した者は20.1%にとどまり、その余の調査対象者は、他社のブランド名等を回答したり、「全くわからない」と回答したりし、本件商品の写真のみからは「全くわからない」と回答した者に対し、原告を含む10社のブランド名等を示した場合においても、原告のブランド名等を回答した者は4.6%であるのに対し、「わからない」と回答した者はなお44.1%に上るというのであって、本件商品の形状は、当該商品に必要とされる機能に資することを目的として選択されたもので、それ自体、強い自他商品の識別力を有するものではないことをも総合考慮すると、本願商標は、使用された結果、需要者において、自他商品の識別力を有するに至ったとまで認めるのは困難というほかなく、したがって、本願商標は商標法3条2項所定の要件を具備するものではないというべきである。
第5 結論
以上によれば、本件審決の商標法3条1項3号該当性及び同条2項所定の要件の具備に係る各判断にいずれも誤りはなく、原告の主張する審決取消事由は認められない。
よって、原告の請求は理由がないから、これを棄却することとして、主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第2部
(裁判長裁判官 森冨義明 裁判官 菊池絵理 裁判官 頼晋一)
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