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原告 

X 

同訴訟代理人弁理士 

西村知浩 

被告 

特許庁長官 

同指定代理人 

鯉沼里果 

同 

高野和行 

同 

阿曾裕樹 

 

主文


 1 原告の請求を棄却する。

 2 訴訟費用は、原告の負担とする。 

 

事実及び理由


第1 請求

 特許庁が不服2024-19755号事件について令和7年9月18日にした審決を取り消す。

第2 事案の概要

 1 特許庁における手続の経緯等

  ⑴ 原告は、令和3年8月18日、次のとおり、商標登録出願を行った(商願2021-102624号。以下「本願」という。)。(乙1)

   ア 商標登録を受けようとする商標(以下「本願商標」という。)

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   イ 商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務

 第20類 クッション、座布団、まくら、マットレス

 第24類 クッションカバー、マットレスカバー、布団カバー、まくらカバー、織物製椅子カバー、織物製壁掛け、カーテン、テーブル掛け、織物製トイレットシートカバー、織物製トイレット蓋カバー

 第25類 被服、帽子、履物及び運動用特殊靴

 第27類 じゅうたん、敷物、マット、ラグ、ヨガ用マット、織物製壁紙、壁掛け(織物製のものを除く。)

  ⑵ 本願について、令和4年2月17日付けで拒絶理由が通知された。この拒絶理由通知において原告に通知された拒絶理由は、本願商標をその指定商品中、例えば「クッション、クッションカバー、じゅうたん、敷物、マット、ラグ、ヨガ用マット、織物製壁紙、壁掛け」に使用しても、これに接する需要者は、当該商品が「チベットに生息するトラの柄」であるか、又は「チベット絨毯のトラ柄のもの」であること、すなわち、単に商品の品質を表示したものとして認識するにすぎないといえるから、本願商標は商標法3条1項3号に該当し、前記商品以外の商品に使用するときは、商品の品質誤認を生じさせるおそれがあるから、同法4条1項16号に該当するというものであった。(甲2)

  ⑶ 上記⑵の拒絶理由通知に対し、原告は同年3月29日付けで意見書を提出したが、本願について同年6月2日付けで新たな拒絶理由が通知された。この新たな拒絶理由通知において原告に通知された拒絶理由は、本願商標が商標法4条1項7号に該当するというものであった。この新たな拒絶理由通知においては、上記⑵の拒絶理由通知で通知された理由は依然として解消されていないとされていた。(甲3、4)

  ⑷ 上記⑶の拒絶理由通知に対し、原告は令和4年7月13日付けで意見書を提出したが、令和6年9月25日付けで拒絶査定がされた。拒絶査定は、本願商標については上記⑵の拒絶理由通知において通知された理由が解消されていないとし、本願商標を本願に係る指定商品中、例えば「じゅうたん、敷物、マット、ラグ、織物製壁紙、壁掛け」等に使用しても、これに接する需要者は、当該商品が、「チベットに生息するトラの柄」であるか、又は「チベット絨毯のトラ柄のもの」であること、すなわち、単に商品の品質を表示したものとして認識するにすぎないといえるから、本願商標は、商標法3条1項3号に該当し、前記商品以外の商品に使用するときは、商品の品質誤認を生じさせるおそれがあるので、同法4条1項16号に該当すると判断した。(甲5、6)

  ⑸ 原告は、令和6年12月9日付けで、拒絶査定不服審判請求をするとともに(不服2024-19755号)、手続補正書を提出した。この手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)は、本願商標の指定商品を以下のとおりとする内容であった(以下、本件補正後の本願商標の指定商品を「本願指定商品」という。)。(甲7、乙2)

 第20類 クッション、座布団、まくら、マットレス

 第24類 クッションカバー、マットレスカバー、布団カバー、まくらカバー、織物製椅子カバー、織物製壁掛け、カーテン、テーブル掛け、織物製トイレットシートカバー、織物製トイレット蓋カバー

 第25類 被服、帽子、履物及び運動用特殊靴

  ⑹ 特許庁は、令和7年9月18日、結論を「本件審判の請求は、成り立たない。」とする審決(以下「本件審決」という。)をし、その謄本は、同年10月1日に原告に送達された。

  ⑺ 原告は、令和7年10月27日、本件審決の取消しを求めて、本件訴えを提起した。

 2 本件審決の理由の要旨

 本件審決の理由の要旨は次のとおりである。なお、本件審決の別掲2、別掲3は、いずれもウェブサイトの記載を認定したものである(以下、本件審決の別掲2、別掲3を、それぞれ単に「別掲2」、「別掲3」ということがある。)。

 本願商標は、上段にトラの図柄を模し、トラを上から見たときの平面形状を表した図形(以下「本願図形部分」という。)を、下段に「Tibetan Tiger」の文字(以下「本願文字部分」という。)を配した構成よりなるものである。

 審査手続で通知した証拠及び別掲2のとおり、本願図形部分に酷似した形状及び柄のラグは、「世界四大絨毯のひとつに数えられるチベット絨毯の内、位の高い僧侶のために作られていた」と紹介されており、その名称は、本願文字部分の構成文字である「Tibetan Tiger」(チベタンタイガー)として、多数取引されている実情が確認できる。

 また、別掲3のとおり、本願指定商品を含む様々な分野において、上記「Tibetan Tiger」(チベタンタイガー)をモチーフとしたと考えられる、本願図形部分に酷似した形状及び柄の商品が「Tibetan Tiger」(チベタンタイガー)と称して取引されている実情が確認できる。

 そうすると、本願商標の構成中、本願図形部分は一般的に「TibetanTiger」(チベタンタイガー)と称されるトラの形状及び柄の特徴を表示するものであり、また、本願文字部分は本願図形部分が表す上記形状及び柄の名称を一般的な書体であるゴシック体で表示したものといえ、そのほか、本願商標の構成態様が何らかの特殊なものであるというべき事情は見当たらない。

 以上のことからすると、本願商標を本願指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者は、その商品が「Tibetan Tiger」(チベタンタイガー)の形状及び柄とその名称を一般的な書体で表した文字を組み合わせたものとして認識するものであり、本願商標は、商品の品質等の特徴を表示する標章のみからなる商標であると認められる。そして、本願商標は、取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものと認められることから、特定人によるその独占使用を認めるのは適当でないとともに、自他商品識別力を欠くものというのが相当である。

 したがって、本願商標は、商標法3条1項3号に該当し、「TibetanTiger」(チベタンタイガー)の形状及び柄の商品以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるので、同法4条1項16号に該当する。

 3 取消事由

  ⑴ 取消事由1

 商標法3条1項3号該当性についての判断の誤り

  ⑵ 取消事由2

 商標法4条1項16号該当性についての判断の誤り

第3 当事者の主張

 1 取消事由1(商標法3条1項3号該当性についての判断の誤り)について

 〔原告の主張〕

  ⑴ 本願商標は、上段にトラ・獅子・狛犬等をモチーフとした図柄を有し、キャラクタを上から見たときの平面的な形状を表した図柄を、下段に「Tibetan Tiger」の文字を配した構成からなる。

 本願商標は、本願図形部分と本願文字部分とが一体不可分的に構成された結合商標であり、本願図形部分又は本願文字部分だけを分離できる性質の商標ではない。

  ⑵ 別掲2において挙げられているウェブサイト(甲11~15)は、いずれもラグの写真が掲載されているが、そのラグの写真と本願図形部分とを比較すると、目のデザインと色、体躯の黒シマの模様と数、平面形状等の端の色味等が相互に異なっている。また、ラグ自体に「Tibetan Tiger」の文字が付記されておらず、ラグは単独で転々流通するものであるから、ラグの使用時において、取引者、需要者が必ず「Tibetan Tiger」であると認識できるものではない。

 また、上記ウェブサイトの見出しに「Tibetan Tiger」の文字が含まれていたとしても、それはあくまでラグに関する見出しであり、当該見出しの一部に「Tibetan Tiger」の単語が並列記載されているにすぎない。

 甲11ないし15が示す取引実情を検討すると、ラグという商品に関する品質表示として用いられておらず、取引者、需要者もそのように認識していない。また、これらの取引実情を根拠に、本願商標が本願指定商品に関する品質表示等に該当するともいえない。

 以上によれば、甲11ないし15の使用態様は、本願図形部分とは似ておらず、本願図形部分と本願文字部分との結合商標である本願商標を表していないから、甲11ないし15の取引実情を根拠として、本願が商標法3条1項3号に該当するとまではいえない。

 さらに、本件審決は、ラグに関する商品の使用態様を用いて、本願商標が商標法3条1項3号に該当すると認定したが、原告は、第27類「じゅうたん、敷物、マット、ラグ、ヨガ用マット、織物製壁紙、壁掛け(織物製のものを除く。)」を本件補正において削除している。甲11ないし15のラグと本願指定商品とは明確に異なるものであり、甲11ないし15の使用態様(ラグ)をもって直ちに本願商標が同号に該当するとまではいえない。

 甲11ないし15のラグと本願指定商品が異なっていることから、商品の取引者及び需要者は異なる。本件審決は、インテリア製品、生活雑貨の一部の商品の取引者、需要者が他の商品の取引者、需要者と同程度の認識を有するとの前提に立つが、この点を証明する根拠、証拠を一切示していない。したがって、本件審決のように、相互に異なる商品のうち一部の商品の取引事情を他の商品の取引事情にそのまま転用することは認められない。

  ⑶ 別掲3において挙げられているウェブサイト(甲16~22)のうち、別掲3の⑹の「OVIE STUDIO」のウェブサイトを検索しても、本件審決で認定されているような情報は記載されていない(甲21)。

 その余のウェブサイト(甲16~20、22)については、掲載されている商品の写真と本願図形部分とを比較すると、尻尾の曲がる方向、目のデザインと色、体躯の黒シマの模様と数などが相互に異なっている。また、掲載されている商品自体に「Tibetan Tiger」の文字が付記されておらず、これらの掲載商品は単独で転々流通するものであるから、当該商品の使用時において、取引者、需要者が必ず「Tibetan Tiger」であると認識できるものではない。

 また、上記ウェブサイトの見出しに「Tibetan Tiger」の文字が含まれていたとしても、それはあくまで当該商品に関する見出しであり、当該見出しの一部に「Tibetan Tiger」の単語が並列記載されているにすぎない。

 甲16ないし20及び22が示す取引実情を検討すると、トラの図柄や「Tibetan Tiger」の文字は、各ウェブサイトに掲載された商品に関する品質表示として用いられておらず、取引者、需要者もそのように認識していない。また、これらの取引実情を根拠に、本願商標が本願指定商品に関する品質表示等に該当するともいえない。

 以上によれば、甲16ないし20及び22の使用態様は、本願図形部分とは似ておらず、本願図形部分と本願文字部分との結合商標である本願商標を表していないから、甲16ないし20及び22の取引実情を根拠として、本願が商標法3条1項3号に該当するとまではいえない。

 さらに、甲20に掲載されている商品である刺繍アップリケ及び甲22に掲載されている商品であるアクリルキーホルダーは、本願指定商品と異なるものであり、商品の取引者、需要者が異なる。本件審決のように、相互に異なる商品のうち一部の商品の取引事情を他の商品の取引事情にそのまま転用することは認められない。

  ⑷ 本件審決は、インターネット上で「Tibetan Tiger Rug」が紹介されている例を多数挙げるが、別掲2の事例、別掲3の事例とも、「デザインモチーフ・テーマ名称」又は「商品名・テーマ名」として用いられているにすぎず、品質・材質・用途を示す一般名称として使用されているものではない。本願指定商品は、第20類、第24類、第25類に属する広範な商品であり、その分野において「Tibetan Tiger」が品質表示として取引者、需要者に認識されているとの証拠は存在しない。品質表示性の判断は、本願指定商品分野の取引の実情によって行われるべきであり、他分野に係る商品の商品名がそのまま一般名称になることはない。本件審決における証拠の大半は海外ECサイト等であり、日本国内での一般的・広範な認知を示す証拠とはいえない。

 また、別掲2及び別掲3の事例を参照しても、トラらしき図柄と本願図形部分とは細部において異なるもので類似せず、「Tibetan Tiger」以外のトラの図柄と解釈できる余地もあり、トラの亜種(ベンガルトラ、スマトラトラ、インドシナトラ、マレートラ、アムールトラ)の区別すらつかないものである。別掲2はラグやじゅうたんに関する商品に適用されたものであり、本願指定商品とは非類似である。別掲3の商品には、本願指定商品に含まれないアクリルキーホルダー(甲22)及び刺繍アップリケ(甲20)が含まれており、本件審決は本願指定商品との具体的な関係を説明していない。

  ⑸ 商標法3条1項3号の「品質」とは、原材料、効能、用途、形状等、需要者が商品を選択するに際して、当該商品がどのような商品であるかを直ちに理解するための属性を指すものであり、装飾的意匠、外観装飾、デザインのテーマ・コンセプト、文化的モチーフまでを含むものではない。

 本件審決は、本願指定商品の品質を「柄」と捉えているが、その解釈は、むしろ装飾的又は創作的意匠として把握できるものであり、商品の内容・性質そのものとして認定されるべき性質のものではない。

 本件審決で示された事例(甲11~22)及び被告が提出した証拠(乙5~27)を検討すると、甲11ないし15及び乙5ないし14は、トラのような図柄がラグの立体的形状として構成されている点で、甲16ないし22及び乙15ないし27の商品で用いられている柄の態様とは柄の表現方法が異質である。甲16ないし22及び乙15ないし27の商品では、トラのような図柄が商品の一部の領域にプリントないし描かれているにすぎず、柄は装飾的又は創作的意匠として直接的に機能するものであり、商品の内容・性質を直接的に表示できるものではない。しかも、これらの商品に描かれた図柄は、細部において相互に異なり、極めて抽象的であり、画一的な観念は想起し得ない。

 また、甲11ないし22及び乙5ないし27を通覧すると、そこに共通して認められるのは、「チベタンタイガー」を「モチーフにした」、「デザインされた」、「由緒ある柄を元にした」といった記載である。これらの記載は、いずれも商品の意匠的特徴や世界観を説明する表現にすぎず、取引者、需要者が当該商品を「チベタンタイガーという品質の商品」であると理解することを示すものではなく、これらは「柄として採用されている」事実を示すにとどまり、「品質表示として一般に理解されている」ことを基礎付ける証拠として評価できるものではない。

 しかも、本件審決の判断及び被告の主張立証の中核は、甲11ないし15及び乙5ないし14が示すように、「チベタンタイガーラグ」と称される敷物文化に関するものである。しかし、ラグ(敷物)は、伝統工芸的要素や文化的価値が強く反映される分野であり、被服、帽子、クッション、カーテン等とは、取引の実情及び需要者の認識構造を大きく異にする。本件審決は、商品「ラグ、じゅうたん」と本願指定商品の取引者、需要者は、その範囲を共通にする場合があるといえるとするが、仮に取引者、需要者がその一部において共通する場合があるとしても、商品「ラグ、じゅうたん」に対する「チベタンタイガーラグ」の認識が全ての商品の取引者、需要者に共有されているとは限らない。また、「チベタンタイガー被服」、「チベタンタイガー帽子」、「チベタンタイガークッション」などの「チベタンタイガー○○」(○○は本願指定商品)として商取引が一般的に成立している事実もない。そうすると、本件審決の述べる内容は推測の域を出ないものである。

  ⑹ア 本願商標は、図形と文字が結合した商標であることから、結合全体として観察すべきであり、構成要素の分離が当然にできると解釈するべきではない。

 本願図形部分については、単なるトラの図柄ではなく、線質・顔の誇張・尾の曲線等が独特な創作性のあるキャラクタであり、取引者、需要者をしてトラと断定できるものではなく、獅子・狛犬などを含めた創作的な意匠を有する独自図形である。当該独自図形が「Tibetan Tiger」の造語と共に一体不可分の結合商標で構成されており、全体として自他商品識別力を有している。

 したがって、本願商標は自他商品識別力を有する商標である。

   イ 本願商標は、斬新な結合商標であって、自他商品識別力を有するものであり、本願商標に独占適応性がある。換言すれば、本願商標を一私人に独占されることによる公益的見地からの弊害は生じない。

 加えて、本願指定商品に関する取引者、需要者が当該商品に関する取引等において、本願商標を使用しなければならない理由は何一つ存在しない。本願商標は、本願指定商品に関する取引者、需要者が流通の過程で使用しなければならない商標ではない。

 以上から、本願商標の独占適応性は認められる。

  ⑺ 商標法3条1項3号を適用する際の根拠にするのは、広辞苑等の辞典・辞書であり、有識者によって多くの考察・検査を重ねられた書物に限られる。

 しかしながら、本件の特許庁審査では、多くのウェブサイトやブログの内容を事実として調査することなく鵜呑みにし、それを根拠にして、商標法3条1項3号の該当性を判断する事態に至っている。

 ところで、多くのウェブサイトやブログの内容は、海外のECサイトのほか、作成者個人の認識や思惑や商品販促を狙ったものであり、辞典や辞書ほどの公平性及び正確性は担保されていない。

 仮に複数のウェブサイトやブログで共通の内容が記載されているとしても、それらは共通の担当者による文書作成や、単に内容を模倣しただけの可能性も少なくない。

 また、別掲2及び別掲3の商品の取引者、需要者が、本願指定商品の取引者、需要者に対し、どの程度の割合を示すのかも明らかでない。被告は、この点を明確にするための証拠を一切提出せず、何も立証していない。むしろ、商品ごとの取引者、需要者が明確に異なると考えることが常識であるのに、あたかも別掲2及び別掲3の根拠をもって本願指定商品のすべての取引者、需要者の認識を共通化して断定している点は、明らかに失当である。

 事実、別掲2及び別掲3には、既に削除されているウェブサイトも存在している(甲21)。誰が作成したサイトであるのかも不明であるし、当該サイト経由で取引する取引者、需要者の数が全体の取引ルートの取引者、需要者の数に対して、どの程度の割合を有するかも不明である。

 このような出所も分からないような正体不明のネット情報を鵜呑みにし、それを確かめるための追加調査を行わず、これらを根拠にして独自な机上の理論を進め、商標法3条1項3号の該当性を判断することは違法である。

 〔被告の主張〕

  ⑴ 本願商標は、トラを背中側の視点から開くように平面状に描いた図形と、その下に「Tibetan Tiger」の文字を横書きしてなる。

 本願商標の構成中、「Tibetan」の文字部分は、「チベット(文化)の」の意味を(乙3)、「Tiger」の文字部分は「トラ」の意味を(乙4)、それぞれ有する英語であって、いずれも我が国において広く一般に親しまれた平易な英単語である。

 近年、乙5ないし14のウェブサイトにおける掲載内容に示されるように、「由緒正しきチベット絨毯のタイガーがモチーフ」、「世界四大絨毯のひとつに数えられるチベット絨毯の中でも、位の高い僧侶のために作られていた」と紹介されるような、「チベタンタイガーラグ」(Tibetan Tiger Rug)などと称される、トラを背中側の視点から開くように平面状に描いた図形を図柄や形状とするラグが、広く製造、販売され、人気を博している。

 また、本願指定商品と関連するインテリア業界やファッション業界、日用品業界などの種々の取引分野においても、上記のような図柄のラグの人気を受けてか、乙15ないし27のウェブサイトにおける掲載内容に示されるように、それと同様のトラの図柄(「チベタンタイガー」と称するものを含む。)を採択、使用した商品(被服、帽子、クッションカバー、カーテンなど)が広く流通している取引の実情がある。

 以上のとおり、本願商標は、その構成及び取引の実情を考慮すれば、種々の取引分野において広く採択されている、ありふれた図柄である「チベタンタイガー」と称されるトラの図柄とその図柄名の欧文字表記を表してなるから、本願指定商品との関係で同種柄を施した商品の質を表示記述するものとして取引に際し必要適切な表示であり、当該商標の需要者、取引者によって当該商品に使用された場合に、将来を含め、商品の質(柄)を表示したものと一般に認識されるものである。

 したがって、本願商標は、本願指定商品との関係において、商品の品質(柄)を普通に用いられる方法で表示するものであり、商標法3条1項3号に該当する。

  ⑵ 原告の主張に対する反論

   ア 原告は、本件審決が示した事例(甲11~22)について、これらの事例で示されているトラの形状・図柄と、本願図形部分とは、細部において相互に異なるものであり、同一視できない旨主張する。

 しかし、本願商標は、その構成及び前記⑴の取引の実情を考慮すれば、種々の取引分野において広く採択されている、ありふれた図柄である「チベタンタイガー」と称されるトラの図柄及びその図柄名の欧文字表記の範ちゅうに属する(同図柄は、多少の違いこそあれ、おおむね、トラを背中側から開くように平面状に描いてなる点で共通する。)から、本願指定商品との関係で同種柄を施した商品の質を表示記述するものとして取引に際し必要適切な表示であり、当該商標の需要者、取引者によって当該商品に使用された場合に、将来を含め、商品の質(柄)を表示したものと一般に認識されるものである。

   イ 原告は、本願図形部分は、単なるトラの図柄ではなく、独特な創作性のあるキャラクタであり、取引者、需要者をしてトラと断言できるものではなく、獅子・狛犬などを含めた創作的な意匠を有する独自図形で、本願商標は本願図形部分が「Tibetan Tiger」の造語とともに一体不可分の結合商標で構成されており、全体として自他商品識別力を有していること、本願商標を一私人に独占させることによる公益的見地からの弊害は生じないこと、及び、本願商標は、本願指定商品との関係ではそのデザインモチーフ又はテーマ名称等を間接的又は暗示的に表示するものであり、商品の品質等を直接的に表示するものではないことから、本願商標が商標法3条1項3号に該当しないと主張する。

 しかし、本願商標は、その構成及び取引の実情を考慮すれば、種々の取引分野において広く採択されている、ありふれた図柄である「チベタンタイガー」と称されるトラの図柄とその図柄名の欧文字表記の範ちゅうに属するばかりか、その図柄名に通じる「Tibetan Tiger」の文字部分(その構成文字は、図柄の由来やモチーフである「チベット」や「トラ」を意味する。)が構成全体として同名の柄を描いてなるとの認識を一層確かなものとするから、当該商品に使用された場合には、本願指定商品に係る需要者、取引者によって、将来を含め、商品の質(柄)を表示したものと一般に認識されるものである。

 また、前記⑴のとおり、近年、「チベタンタイガーラグ」(Tibetan Tiger Rug)などと称される、トラを背中側の視点から開くように平面状に描いた図形を図柄や形状とするラグが人気を博しており、本願指定商品とも関連する種々の取引分野においても、「チベタンタイガー」と称する、それと同様のトラの図柄を採択、使用した商品が広く流通している取引の実情があることを踏まえると、それらは、本願指定商品との関係で同種柄を施した商品の質を表示記述するものとして取引に際し必要適切な表示であるから、その図柄及び図柄名を表してなる本願商標について原告のみによる独占使用を認めることは、同種柄を施した商品の自由な取引や流通に影響を与えるおそれがあり、独占適応性の観点からの問題がある。

 そうすると、本願商標は、本願指定商品との関係において、商品の品質(柄)を普通に用いられる方法で表示するものであり、商標法3条1項3号に該当する。

  ⑶ 原告は、ウェブサイトやブログの情報を鵜呑みにし、それを確かめるための追加調査を行わず、これらを根拠にして独自な机上の理論を進め、商標法3条1項3号の該当性を判断することは明らかに違法であるとか、商品の図柄が「Tibetan Tiger」であると認識されていることを示す証拠を提出していないなどと主張する。

 しかし、ウェブサイトやブログを通じて、現実の取引実態を把握することは可能であり、それらを取引の実情を認定するための証拠として採択、採用できない理由はない。

 2 取消事由2(商標法4条1項16号該当性についての判断の誤り)について

 〔原告の主張〕

 商標法4条1項16号は商標自体が当該指定商品との関係において一定の品質、原材料、効能等を具体的に表示又は強く想起させ、その品質を有しない商品に使用された場合に需要者に誤認を生じさせるおそれがある場合に限って適用されるものであり、単に何らかの観念や連想を生じ得るにとどまる標章や、装飾的、創作的印象を与えるにすぎない標章についてまで、同号の適用が及ぶものではない。

 本願商標の「Tibetan Tiger」という文字は、動物学上又は商品取引上、特定の品質、原材料、製法、機能等を意味する確立した概念ではない。また、本願指定商品との関係において、取引者、需要者が「Tibetan Tiger」という文字又は本願商標の構成全体から、当該商品が特定の品質を有する商品であると具体的かつ直接的に理解することはない。

 仮に、本願商標から「トラ」をモチーフとした意匠であるとの観念を想起し得るとしても、それはあくまで商品の外観的デザインや装飾的テーマに関する連想にとどまるものであり、商品の品質そのものに関する理解を生じさせるものではない。

 また、仮に特定の取引分野(ラグ、敷物等)において、「チベタンタイガー」が一定の意匠的呼称として理解されている場合があるとしても、そのことから直ちに、本願指定商品全般について、取引者、需要者が同様の品質認識を有すると推認することはできない。本願指定商品である被服、日用品等の分野において、需要者は、柄やモチーフを商品の品質表示としてではなく意匠性やデザインの一要素として把握するのが通常である。したがって、本願商標が本願指定商品に使用されたとしても、需要者が「当該商品が『チベタンタイガー』という特定の品質を備えている」との誤認を生ずる具体的可能性は認められない。

 さらに、本願商標は、創作性を有する図形と造語的文字が結合した構成を有しており、このような構成に照らせば、取引者、需要者は、商品の品質を表示する標章としてではなく、特定の出所を表示するブランド標識として把握するのが自然であるから、本願商標が使用された場合に、商品の品質について具体的かつ現実的な誤認を生じさせるおそれは存在しない。

 以上のとおり、本願商標は、商品の品質を具体的に表示又は強く想起させるものではなく、本願指定商品との関係において取引者、需要者に品質の誤認を生じさせる具体的おそれを有しないから、商標法4条1項16号に該当するものではない。

 〔被告の主張〕

 前記1〔被告の主張〕⑴のとおり、本願商標は、その構成及び取引の実情を考慮すれば、「チベタンタイガー」と称されるトラの図柄とその図柄名の欧文字表記を表してなるものであり、本願指定商品との関係で同種柄を施した商品の質を表示記述するものとして取引に際し必要適切な表示であり、当該商標の需要者、取引者によって当該商品に使用された場合に、将来を含め、商品の質(柄)を表示したものと一般に認識されるものであるから、「チベタンタイガー」柄以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあり、商標法4条1項16号に該当する。

第4 当裁判所の判断

 1 取消事由1(商標法3条1項3号該当性についての判断の誤り)について

  ⑴ 判断基準

 商標法3条1項3号に掲げる商標が商標登録の要件を欠くと規定されているのは、このような商標は、指定商品との関係で、その商品の産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、形状その他の特性を表示記述する標章であり、一般的に使用される標章であって、多くの場合自他商品識別力を欠き、取引に際し何人もその使用を欲するものであることから、特定人によるその独占使用を認めるのは適当でないとされる場合があることによる。

 そうすると、出願に係る商標が、その指定商品について商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標(商標法3条1項3号)であるというためには、当該商標の指定商品に使用された場合に、その需要者等によって商品の品質を表示したものと一般に認識されるものであり、使用をされた結果需要者等が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるものについて商標登録を受けることができる場合(商標法3条2項)のほかは、特定人によるその独占使用を認めるのは適当でないとされるものに該当することを要する。そして、その判断は、当該商標の構成やその指定商品に関する取引の実情を考慮して行うべきである。なお、登録阻却事由の存否の判断基準時は、拒絶査定不服審判では、審決時である。

  ⑵ 本願商標の構成

 本願商標は、上段にトラの柄を模し、トラを上から見たときの平面形状を表した図形(本願図形部分)を、下段に「Tibetan Tiger」の文字(本願文字部分)を配した構成よりなるものである。

 本願文字部分の「Tibetan Tiger」は「Tibetan」の欧文字及び「Tiger」の欧文字を組み合わせたものであって、「Tibetan」は「チベットの」、「チベット文化の」との意味を有する英単語であり、「Tiger」は「トラ」の意味を有する英単語である。(乙3、4)

  ⑶ 本願商標及び本願指定商品に関する取引の実情

   ア 各項末に掲記した証拠及び弁論の全趣旨によれば、本件審決がされた令和7年9月18日の時点での、「じゅうたん・ラグ」の商品における「Tibetan Tiger」又は「チベタンタイガー」の語に関する取引の実情として、次の事実が認められる。なお、被告が本件訴訟で証拠(乙号証)として提出したウェブサイトについては、提出されたページ(ウェブページ)の記載内容により、本件審決がされた同日時点で当該ウェブページの記載が存在していたと認められるものに限り、以下の認定の証拠としている(この点は、後記イについても同様である。)。

 (ア) 「plywood」のウェブサイトにおいて、「チベタンタイガーラグラージ DETAIL Tibetan Tiger Rug Lサイズ DTTR-01/DTTR-02」の見出しの下、当該ラグの写真が複数枚掲載されており、以下の写真はそのうちの1枚である。また、「世界4大絨毯の一つに数えられるチベット絨毯の中でも、位の高い僧侶のために作られていたという実は由緒正しき『チベタンタイガーラグ』をモチーフにしたラグの登場です。チベット仏教でトラは神聖な生き物とされています。」との記載がある。(別掲2の⑴のウェブサイトである。甲11)

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 (イ) 「amazon.co.jp」のウェブサイトにおいて、「チベタンタイガーラグ スモール DETAIL Tibetan Tiger Rug[DTTR-01/Sサイズ]」の見出しの下、当該ラグの写真として次の写真が掲載されている。また、「商品の説明」の見出しの下、「世界4大絨毯の一つに数えられるチベット絨毯の中でも、位の高い僧侶のために作られていたという実は由緒正しき『チベタンタイガーラグ』をモチーフにしたラグの登場です。チベット仏教でトラは神聖な生き物とされています。」との記載がある。(別掲2の⑵のウェブサイトである。甲12)

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 (ウ) 「O.L.D Furniture and Apparel」のウェブサイトにおいて、「Tibetan Tiger Rug DTTR-01 Large チベタンタイガーラグ DTTR-01 ラージ」の見出しの下、当該ラグの写真が複数枚掲載されており、以下の写真はそのうちの1枚である。また、「世界四大絨毯の一つに数えられるチベット絨毯の中でも、位の高い僧侶のために作られていたという由緒正しきチベタンタイガーラグをモチーフに玄関やリビングと色々な場所に対応できるようウールと裏面をコットン素材に仕立てております。」との記載がある。(別掲2の⑶のウェブサイトである。甲13)

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 (エ) 「Rigna」のウェブサイトにおいて、「チベタン タイガー ラグ(サイズMサイズ)TIBETAN TIGER RUG」の見出しの下、当該ラグの写真として以下の写真が掲載されている。(別掲2の⑷のウェブサイトである。甲14)

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 (オ) 「Rakuten Fashion JOURNAL STANDARD FURNITURE」のウェブサイトにおいて、「TIBETANTIGER RUG L チベタンラグ」の見出しの下、当該ラグの写真として以下の写真が掲載されている。また、「世界四大絨毯の一つに数えられるチベット絨毯の中でも、位の高い僧侶のために作られていたという由緒正しきチベタンタイガーラグ。」との記載がある。(別掲2の⑸のウェブサイトである。甲15)

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 (カ) 「NATURAL STYLE」のウェブサイトにおいて、「チベタンタイガーラグ/ウール・コットン」の商品紹介記事(2022年1月4日付け)に、当該ラグの写真が複数枚掲載されており、以下の写真はそのうちの1枚である。また、「世界4大絨毯の一つに数えられるチベット絨毯の中でも、位の高い僧侶の為に作られていたという、実は由緒正しき『チベタンタイガーラグ』。」の記載がある。(乙6)

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 (キ) 「エア・リゾーム」のウェブサイトにおいて、「チベタンタイガーラグTIBETAN TIGER RUG」の商品紹介記事に、当該ラグの写真が複数枚掲載されており、以下の写真はそのうちの1枚である。また、「高いデザイン性から雑誌などでも取り上げられ、近年注目を浴びているチベタンタイガーラグ。世界4大絨毯の1つとして有名なチベット絨毯の中でも、位の高い僧侶のためにつくられていたタイガーラグを再現し、幅広いシーンでお使いいただけるよう3サイズ展開でご用意いたしました。」の記載とともに、トラの図柄よりなる商品写真が掲載されている(乙7)。

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   イ 各項末に掲記した証拠及び弁論の全趣旨によれば、本件審決がされた令和7年9月18日の時点での、「じゅうたん・ラグ」以外の商品における「Tibetan Tiger」又は「チベタンタイガー」の語に関する取引の実情として、次の事実が認められる。

 (ア) 「AMERICAN CLASSICS」のウェブサイトにおいて、「Tibetan Tiger Velvet Cushion Cover -Black-」の見出しの下、「チベット地方に伝わる伝統的な織物『チベタンラグ』のタイガー本織絨毯の柄をプリントしたクッションカバーになります。」の記載とともに、当該商品の写真として以下の写真が掲載されている。(別掲3の⑴のウェブサイトである。甲16)

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 (イ) 「友安製作所」のウェブサイトにおいて、「チベタンタイガーが全面に印刷された存在感抜群のカーテン- Tibetan Tiger(チベタンタイガー)-」の見出しの下、「チベットの位の高い僧侶の絨毯として作られる『チベタンタイガー』と呼ばれる敷物を元に、等間隔に並んだ大胆でおしゃれなデザイン。」の記載とともに、当該商品の写真が複数枚掲載されており、以下の写真はそのうちの2枚である。(別掲3の⑵ のウェブサイトである。甲17)

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 (ウ) 「BEAMS」のウェブサイトにおいて、2023年(令和5年)10月19日付けブログ記事として、「チベタンタイガーラグをモチーフにプリントされたMOUNTAIN HARDWEAR×BEAMS別注のチベタンタイガー ロングスリーブ Tシャツ」の記載、「世界4大絨毯の一つに数えられるチベット絨毯♪ 位の高い僧侶のために作られていたという由緒正しきチベタンタイガーラグをモチーフにプリント」の記載とともに、当該商品の写真として以下の写真が掲載されている。(別掲3の⑶のウェブサイトである。甲18)

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 (エ) 「HEATH」のウェブサイトにおいて、「【HEATH】EMBROIDERY TIBETAN TIGER TEE 刺繍 Tシャツ“チベタンタイガー”」の見出しの下、「伝統の『チベタンタイガー』を美しい刺繍で表現」の記載、「チベタンタイガーは、チベットの伝統的な絨毯に織り込まれる人気の文様。」の記載とともに、当該商品の写真が複数枚掲載されており、以下の写真はそのうちの1枚である。(別掲3の⑷のウェブサイトである。甲19)

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 (オ) 「mimi刺繍」のウェブサイトにおいて、「チベタンタイガー・ラグ/[Tiger Rugs]刺繍アップリケ」の見出しの下、「チベタンタイガー・ラグの刺繍アップリケ」、「■タイガーラグをお手軽なアップリケにしました■」、「チベット絨毯は世界4大絨毯の1つに数えられる、チベット生産の歴史ある貴重な絨毯です 特にタイガーの模様は位の高い僧呂の為に作られていたと言われています」の記載とともに、当該商品の写真が複数枚掲載されており、以下の写真はそのうちの1枚である。(別掲3の⑸のウェブサイトである。甲20)

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 (カ) 「SUZURI」のウェブサイトにおいて、「tibetan★tiger アクリルキーホルダー」の見出しの下、「世界四大絨毯の一つであるチベット絨毯の中でも、位の高い僧侶のために作られていたという由緒正しきチベタンタイガーラグは、愛らしいデザインからインテリアとしても取り入れられる人気のデザイン。そんなチベタンタイガーをモチーフにした商品です。」の記載とともに、当該商品の写真が複数枚掲載されており、以下の写真はそのうちの1枚である。(別掲3の⑺のウェブサイトである。甲22)

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 (キ) 「WAXBERRY BLOG」のウェブサイトにおいて、「GAIJIN MADEのチベタンタイガーシリーズ!!」の見出しの記事情報(2018年〔平成30年〕4月5日付け)に、「世界4大絨毯の1つに数えられるチベット絨毯の中で神聖なものとされているタイガー柄を総ししゅうで表現しています。」の記載とともに、トラの柄を施した商品(シャツ)の写真が複数枚掲載されており、以下の写真はそのうちの1枚である。(乙15)

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 (ク) 「メルカリ」のウェブサイトにおいて、「チベタンタイガー タイガーブランケット 80×120」の商品紹介記事に、トラの柄を施した商品(毛布)の写真として、以下の写真が掲載されている。(乙24)

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 (ケ) 「メルカリ」のウェブサイトにおいて、「チベタンタイガー プリント毛布 膝掛け ブランケット」の商品紹介記事に、トラの柄を施した商品(毛布)の写真として、以下の写真が掲載されている。(乙25)

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  ⑷ 検討

   ア(ア) 前記⑶ア(ア)ないし(キ)に挙げた各事実によれば、本件審決がされた当時、トラの柄を模し、トラを上から見たときの平面形状を表し、S字状に湾曲した尾、U字形の口、上まぶたに縁取り様のデザインが施されているという特徴を有する形状のラグについて、「Tibetan Tiger Rug」(全て大文字で表記されているものも存在する。)あるいは「チベタンタイガーラグ」と称して取引されている取引の実情があったと認められる。

 (イ) また、前記⑶イ(ア)ないし(ケ)に挙げた各事実によれば、本件審決がされた当時、トラの柄を模し、トラを上から見たときの平面形状を表し、S字状に湾曲した尾、U字形の口、上まぶたに縁取り様のデザインが施されているという特徴を有する図柄を用いた、じゅうたん・ラグ以外の商品が販売されており、このような商品を紹介・販売するウェブサイトにおいて、当該商品を示す見出しの記載を「チベタンタイガー」、「Tibetan Tiger」(全て大文字で表記されているもの、全て小文字で表記されているものも存在する。)の文字を含むものとし、上記図柄について、チベットで生産されているじゅうたんに用いられている図柄であることを示して取引されている取引の実情があったと認められる。前記⑶イ(ア)ないし(ケ)のウェブサイトには、上記図柄が用いられているじゅうたんを「チベタンタイガーラグ」と表記するものや、上記図柄を「チベタンタイガー」と表記するものもある。

 そして、前記⑶イ(ア)ないし(ケ)のウェブサイトで紹介・販売されている商品のうち、クッションカバー(前記⑶イ(ア))、カーテン(同(イ))及びTシャツ・シャツ(被服に含まれる。同(ウ)、(エ)、(キ))は、本願指定商品に含まれる商品であると認められる。

   イ 本願商標のうち、本願図形部分は、トラの柄を模し、トラを上から見たときの平面形状を表した図形であるが、前記第2の1⑴アのとおりである本願図形部分の具体的内容によれば、トラの柄を模し、トラを上から見たときの平面形状を表し、S字状に湾曲した尾、U字形の口、上まぶたに縁取り様のデザインが施されているという特徴を有するものであり、「Tibetan Tiger Rug」あるいは「チベタンタイガーラグ」と称して取引されているじゅうたん・ラグに用いられている図柄(前記⑶ア(ア)ないし(キ))や、じゅうたん・ラグ以外の商品であって、当該商品を取り扱うウェブサイトにおいて当該商品を示す見出しの記載が「チベタンタイガー」、「Tibetan Tiger」の文字を含むものとされている商品に用いられている図柄(前記⑶イ(ア)ないし(ケ))と特徴が共通しており、外観が極めて類似しているものも多いといえる。

 また、本願文字部分は、「Tibetan Tiger」の欧文字からなるが、文字に特殊な装飾が用いられていることはなく、一般的な書体により表されているといえる。

   ウ 上記ア及びイによれば、本願指定商品の取引者、需要者は、本願商標が本願指定商品に使用されたときには、本願商標は、「Tibetan Tiger」(チベタンタイガー)と称される図柄と、その図柄の名称を一般的な書体で表した文字を組み合わせたものであると認識するといえる。

 したがって、本願商標は、本願指定商品に使用された場合に、商品の品質を表示したものと一般に認識されるものであり、使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるものについて商標登録を受けることができる場合(商標法3条2項)のほかは、特定人によるその独占使用を認めるのは適当でないとされるものに該当し、その指定商品について商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標(商標法3条1項3号)であると認められる。なお、本願商標は、使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるもの(商標法3条2項)であるとは認められない。

  ⑸ 原告の主張に対する判断

   ア 原告は、前記第3の1〔原告の主張〕⑴及び⑹のとおり、本願商標は本願図形部分と本願文字部分が一体不可分的に構成された結合商標であり、かつ独創性を有するものであるなどとして、全体として自他識別力を有しており、独占適応性が認められると主張する。

 しかし、結合商標につき、当該商標を構成する要素を一連一体のものと観察すべきか、それとも分離して観察することが可能であるのかは、当該商標と他の商標との類否判断において検討すべき事項であって、これによって当該商標の自他識別力の有無が直ちに決まることはない。

 本願商標についても、そもそも本願図形部分と本願文字部分がこれらを分離して観察することが取引上不自然と思われるほど不可分的に結合しているとは解しがたいものである上、上記両部分の分離観察可能の可否は、本願商標の自他識別力の有無の判断を直ちに導くものではない。

 そして、前記⑷ア、イのとおり、本願図形部分は、トラの柄を模し、トラを上から見たときの平面形状を表し、S字状に湾曲した尾、U字形の口、上まぶたに縁取り様のデザインが施されているという特徴を有する図柄であって、「Tibetan Tiger Rug」あるいは「チベタンタイガーラグ」と称して取引されているじゅうたん・ラグに用いられている図柄(前記⑶ア(ア)ないし(キ))や、じゅうたん・ラグ以外の商品であって、当該商品を取り扱うウェブサイトにおいて当該商品を示す見出しの記載が「チベタンタイガー」、「Tibetan Tiger」の文字を含むものとされている商品に用いられている図柄(前記⑶イ(ア)ないし(ケ))と、特徴が共通しており、外観が極めて類似しているものも多く、独創性が高いとはいえない。

 本願文字部分は、「Tibetan Tiger」の欧文字を一般的な書体で表してなるものであって、独創性が高いものとはいえず、本願文字部分の文字が本願図形部分の図柄の名称として用いられているものであることからすれば、本願図形部分と本願文字部分を組み合わせた結合商標としたことについても、独創性が高いとは認められない。

 以上によれば、本願商標が独創性の高い商標であることを根拠として、原告による独占的使用を認めることが相当であるとは認められず、商標法3条1項3号に該当しないと解されることにもならない。

 したがって、原告の上記主張は採用することができない。

   イ 原告は、前記第3の1〔原告の主張〕⑵のとおり、本件審決の別掲2のウェブサイトから認められる取引の実情を根拠として、本願商標が商標法3条1項3号に該当すると認めることはできない旨主張する。

 しかし、本件審決も、本判決の前記⑷の判断も、別掲2のウェブサイトから認められる取引の実情のみを根拠として、本願商標が商標法3条1項3号に該当すると判断したものではない。前記⑷ア(イ)のとおり、別掲3のウェブサイトを含む前記⑶イ(ア)ないし(ケ)のウェブサイトの各記載により、じゅうたん・ラグ以外の商品に係る取引の実情が認められるが、この取引の実情は、じゅうたん・ラグに係る前記⑷ア(ア)の取引の実情の存在を前提としているといえ、別掲2のウェブサイトの記載(前記⑶ア(ア)ないし(オ))は、前記⑶ア(カ)、(キ)のウェブサイトの記載とともに、じゅうたん・ラグに係る上記取引の実情の認定の根拠となるものである。

 別掲2のウェブサイトに掲載されたラグの図柄と、本願図形部分とは、全く同一ではないが、トラの柄を模し、トラを上から見たときの平面形状を表し、S字状に湾曲した尾、U字形の口、上まぶたに縁取り様のデザインが施されているという特徴が共通しており、取引者及び需要者に極めて類似した図柄であると認識させるものであるといえる。

 仮に、別掲2のウェブサイトで取り扱われているラグ自体に「Tibetan Tiger」の文字が付記されておらず、当該ラグを取得した需要者の中に、当該ラグが「Tibetan Tiger Rug」あるいは「チベタンタイガーラグ」と称されることを認識しない者が存在する可能性があるとしても、前記⑷ア(ア)のとおりの取引の実情を認定できることは変わらない。

 したがって、原告の上記主張は採用することができない。

   ウ 原告は、前記第3の1〔原告の主張〕⑶のとおり、本件審決の別掲3のウェブサイトから認められる取引の実情を根拠として、本願商標が商標法3条1項3号に該当すると認めることはできない旨主張する。

 しかし、前記⑶イ(ア)ないし(ケ)のウェブサイト(別掲3のウェブサイトを含む。)に掲載された商品に付された各図柄は、同一ではないが、トラの柄を模し、トラを上から見たときの平面形状を表し、S字状に湾曲した尾、U字形の口、上まぶたに縁取り様のデザインが施されているという特徴が共通しており、本願図形部分の図柄も上記特徴を有している。そして、上記ウェブサイトに掲載された商品の図柄の中には、本願図形部分の図柄と極めて似たものも複数あるといえる。

 仮に、別掲3のウェブサイトに掲載された商品自体に「TibetanTiger」の文字が付記されておらず、当該商品を取得した需要者の中に、商品に付された図柄が「Tibetan Tiger」(チベタンタイガー)と称されていることを認識しない者が存在する可能性があるとしても、別掲3のウェブサイトの記載内容から前記⑷ア(イ)のとおりの取引の実情が認定できることは左右されない。

 前記⑶イ(ア)ないし(ケ)のウェブサイトに掲載された商品のうち、⑶イ(オ)、(カ)、(ク)、(ケ)に掲載された各商品は、本願指定商品に含まれるものとは認められないが、⑶イ(ア)、(イ)、(ウ)、(エ)、(キ)に掲載された各商品は本願指定商品に含まれるものであり(前記⑷ア(イ))、本願指定商品を含む商品に係る取引の実情を認定し、この取引の実情を基に本願商標の商標法3条1項3号該当性を判断することが不当であるとは解されない。

 したがって、原告の上記主張は採用することができない。

   エ 原告は、前記第3の1〔原告の主張〕⑷及び⑸のとおり、本願商標は、本願指定商品について、商品の品質を表示したものと認識されるものとはいえない旨主張する。

 前記⑷ア(ア)、(イ)のとおり認められる取引の実情、及び前記⑷イのとおりである本願商標の構成からすれば、前記⑷ウのとおり、本願の指定商品の取引者、需要者は、本願商標が本願指定商品に使用されたときには、本願商標は、「Tibetan Tiger」(チベタンタイガー)と称される図柄と、その図柄の名称を一般的な書体で表した文字を組み合わせたものであると認識するといえ、これは商品の質(内容)を表示したものであるとの認識に該当するといえる。

 したがって、原告の上記主張は採用することができない。

   オ 原告は、前記第3の1〔原告の主張〕⑺のとおり、ウェブサイトやブログの記載内容は、辞典や辞書ほどの公平性及び正確性がないこと、誰が作成したウェブサイトであるか明らかでないことなどから、これらの記載を基に商標法3条1項3号該当性を判断することは違法であると主張する。

 しかし、前記⑶ア及びイに挙げたウェブサイトは、インターネット上で広く閲覧可能であったものであって、各項に掲げた証拠によれば、商品の販売サイト又は商品を紹介したブログであると認められる。このようなウェブサイトにおいて本件審決の時点で存在した記載内容から、本件審決の時点における取引の実情を認定することが不当であるとは解されない。

 そして、本願指定商品の需要者は一般の消費者であり、上記ウェブサイトで取り扱われている商品の需要者も一般の消費者であると認められるから、上記ウェブサイトで取り扱われている商品の需要者が本願指定商品の需要者と異なるために、上記ウェブサイトから需要者の認識を認定できないということはない。

 したがって、原告の上記主張は採用することができない。

  ⑹ 取消事由1に関する結論

 以上によれば、商標法3条1項3号についての本件審決の判断に誤りはなく、取消事由1は理由がない。

 2 取消事由2(商標法4条1項16号該当性についての判断の誤り)について

  ⑴ 前記1⑷ウのとおり、本願商標は、それに接する需要者、取引者において、「Tibetan Tiger」(チベタンタイガー)と称される図柄と、その図柄の名称を一般的な書体で表した文字を組み合わせたものであると一般に認識するものである。

 そうすると、本願商標を、本願指定商品中、「Tibetan Tiger」(チベタンタイガー)と称される図柄、すなわち、トラの柄を模し、トラを上から見たときの平面形状を表し、S字状に湾曲した尾、U字形の口、上まぶたに縁取り様のデザインが施されているという特徴を有する図柄を用いていない商品に使用する時は、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるから、本願商標は商標法4条1項16号に該当する。

  ⑵ 原告の主張に対する判断

 原告は、前記第3の2〔原告の主張〕のとおり、本願商標は、商品の品質を具体的に表示又は強く想起させるものではなく、本願指定商品との関係において取引者、需要者に品質の誤認を生じさせるおそれはないと主張する。

 しかし、原告が取消事由2に関して主張する内容は、取消事由1において、本願商標が商標法3条1項3号に該当しないとして主張する内容と実質的に重なるものであるといえ、取消事由1に関する原告の主張を採用することができないのは前記1⑸のとおりであり、取消事由2に関する原告の主張も同様に採用することができない。

  ⑶ 取消事由2に関する結論

 以上によれば、商標法4条1項16号についての本件審決の判断に誤りはなく、取消事由2は理由がない。

 3 その他、原告が縷々主張する内容を検討しても、前記1及び2の判断は左右されない。

 4 結論

 以上のとおりであり、原告が主張する取消事由はいずれも理由がなく、本件審決について、これを取り消すべき違法はない。したがって、原告の請求は棄却されるべきである。

 よって、主文のとおり判決する。

 知的財産高等裁判所第3部

 (裁判長裁判官 中平健 裁判官 今井弘晃)

 裁判官水野正則は、転補により署名押印することができない。裁判長裁判官 中平健

 
 
 

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