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原告
株式会社ヤクルト本社
同訴訟代理人弁護士
木村吉宏
同訴訟代理人弁理士
伊東美穂
同
池田恭子
同
守田裕介
同
香島友希
被告
特許庁長官
同指定代理人
鯉沼里果
同
山田和彦
同
阿曾裕樹
主文
1 特許庁が不服2025-5701号事件について令和7年9月9日にした審決を取り消す。
2 訴訟費用は、被告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求
主文同旨
第2 事案の概要
1 本件は、商標登録出願の拒絶査定に対する不服審判請求について、特許庁が請求不成立とした審決の取消しを求める事案であり、争点は、出願に係る商標の商標法4条1項11号該当性である。
2 特許庁における手続の経緯等
⑴ 原告は、令和5年8月23日、別紙1「本願商標」記載1の構成から成り、指定商品を同記載2の第3類の区分に属する商品とする商標(以下「本願商標」という。)について商標登録出願(商願2023-93738)をした(甲16)。
⑵ 原告は、令和7年1月15日付けで拒絶査定(甲19)を受けたことから、同年4月14日、拒絶査定不服審判請求(以下「本件審判請求」という。)をし、特許庁は、これを不服2025-5701号事件として審理した(甲20)。
⑶ 特許庁は、令和7年9月9日、本件審判請求について、「本件審判の請求は、成り立たない。」とする審決(以下「本件審決」という。)をし、その謄本は、同月29日、原告に送達された。
⑷ 原告は、令和7年10月24日、当庁に対し、本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起した。
3 引用商標
商標登録第6777953号商標(令和5年7月31日登録出願、令和6年2月9日設定登録。以下「引用商標」という。)は、別紙2「引用商標」記載1のとおりの構成から成り、指定商品を同記載2の第3類の区分に属する商品とする商標である(甲11)。
4 本件審決の理由の要旨
⑴ 本願商標は、上段に、外側から中央に向けて灰色から白色にグラデーションが施された円図形内に「乳酸菌」と「サイエンス」の文字を上下二段に表し、中段に、乗算記号と理解される「×」の記号を配し、下段に、グラデーションが施された灰色の線により描かれた年輪様の円図形内に「肌構造」と「サイエンス」の文字を上下二段に表した構成から成る結合商標である。
本願商標の構成を観察すると、上段、中段及び下段の各構成部分(以下、順に「上段部分」、「中段部分」、「下段部分」ということがある。)は、それぞれが独立した印象を与え、視覚上分離して認識されるもので、観念的に密接な関連性を有しているとはいえず、構造全体から生ずる称呼は相当冗長であることからすると、これらを常に一体不可分のものとして認識しなければならない理由はない。
そして、本願商標の構成中、下段部分は「肌構造サイエンス」という一連一体の語を表して成ると看取し得るもので、その構成中の各語の語義を結合した「肌の構造についての科学」ほどの意味合いを連想、想起させる。また、年輪様の図形部分は、直ちに特定の事物を想起させず、同部分から特定の称呼及び観念が生ずるとはいえない。
そうすると、本願商標は、下段部分に相応して「ハダコウゾウサイエンス」の称呼が生じ、「肌の構造についての科学」ほどの観念を生ずる。
⑵ 引用商標は、「肌構造サイエンス」の文字を標準文字で表して成るもので、構成中の各語の語義を結合した「肌の構造についての科学」ほどの意味合いを連想、想起させる。
そうすると、引用商標は、その構成文字に相応して「ハダコウゾウサイエンス」の称呼が生じ、「肌の構造についての科学」ほどの観念を生ずる。
⑶ 本願商標と引用商標の類否について検討すると、両商標は、外観において、その構成全体が相違するものの、本願商標の下段部分と引用商標の比較においては、外観上近似した印象を与え、「ハダコウゾウサイエンス」の称呼及び「肌の構造についての科学」ほどの観念を共通にする。
したがって、取引者や需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すると、本願商標と引用商標は、商品の出所について誤認混同を生じさせるおそれのある類似の商標といえる。
⑷ 本願商標の指定商品は、引用商標の指定商品中、第3類の区分に属する「せっけん類、化粧品」と同一のものである。
⑸ 以上のとおり、本願商標は、引用商標と類似する商標であり、引用商標の指定商品と同一の商品について使用するものであるから、商標法4条1項11号に該当する。
第3 審決取消事由に関する当事者の主張
1 原告の主張
次のとおり、本願商標の商標法4条1項11号該当性に係る本件審決の判断には誤りがある。
⑴ 本願商標
本願商標は、上段部分、中段部分及び下段部分を組み合わせた結合商標であり、上段部分の文字部分からは「乳酸菌についての科学的知識(を利用した商品)」との、下段部分の文字部分からは「肌の構造についての科学的知識(を利用した商品)」との観念が生ずるものの、指定商品との関係において、いずれも出所識別標識としての機能は比較的弱い。
そして、本願商標は、⒜ 上段部分の円図形と下段部分の円図形は同大、同色である、⒝ 上段部分の「乳酸菌」と下段部分の「肌構造」は、同書体、同大であり、いずれも漢字3文字で構成されている、⒞ 上段部分の「サイエンス」の文字と下段部分の「サイエンス」の文字は同書体、同大である、⒟ 上段部分の文字部分及び下段部分の文字部分が、いずれも円図形の中心部に配置されている、⒠ 上段部分の文字部分及び図形部分と下段部分の文字部分及び図形部分が、それぞれまとまりよく一体不可分に結合している、⒡ 中段部分の「×」の記号が、上段部分と下段部分の中間に配置されている、⒢ 中段部分の「×」の記号は、その前後を掛け合わせる意味を有する乗算記号である、⒣ 上段部分、中段部分及び下段部分の中心が揃っているといった特徴を有し、本願商標全体が外観的にも観念的にも密接に関連し一体不可分のものとして表されている。
また、本願商標は、上段部分、中段部分及び下段部分が相互に一定の間隔を空けて重なり合うことなく配置され、その書体、大きさ、色彩、配置等も、全体に統一感を生ずるように工夫がされている。本願商標の上段部分と下段部分のデザイン、バランスは整合的で、図形部分及び文字部分の比率が保たれ、円図形内の文字の書体や配置も共通していること、上段部分から生ずる称呼「ニュウサンキンサイエンス」と下段部分から生ずる称呼「ハダコウゾウサイエンス」は、音数が同一で、語調も類似し、韻を踏むような対応関係にあること、上段部分の文字部分と下段部分の文字部分は、指定商品との関係において、いずれも出所識別標識としての機能が比較的弱いもので、その一方が取引者や需要者に強く支配的な印象を与えるものではなく、むしろ、双方が一体として補完的に機能し、本願商標は全体として取引者や需要者に統一的印象を与えること、そして、上段部分と下段部分との間に「×」の記号が配置されることにより、上段部分と下段部分とが視覚的かつ概念的に結び付いて、上段部分の文字部分と下段部分の文字部分の補完関係が、より強固になっていることからすると、本願商標については、構成部分全体を観察すべきであり、その一部を抽出し、この部分のみを引用商標と比較して商標の類否を判断することは許されない。
そうすると、本願商標からは「ニュウサンキンサイエンスカケルハダコウゾウサイエンス」との称呼のみが生じ、「乳酸菌についての科学的知識と肌の構造についての科学的知識を掛け合わせたもの(商品)」との観念のみが生ずる。
⑵ 引用商標
引用商標は、「肌構造サイエンス」の文字が同書体、同大、同間隔で横書きされて成るもので、引用商標からは「ハダコウゾウサイエンス」との称呼が生じ、「肌の構造についての科学的知識(を利用した商品)」との観念が生ずる。
⑶ 本願商標と引用商標の類否
ア 本願商標と引用商標は、その構成中に「肌構造」、「サイエンス」の文字を含む点において共通するものの、「乳酸菌」の文字、「×」の記号及び図形部分の有無など、その外観において明らかに相違する。
また、本願商標から生ずる称呼「ニュウサンキンサイエンスカケルハダコウゾウサイエンス」と、引用商標から生ずる称呼「ハダコウゾウサイエンス」は、非類似である。
さらに、本願商標から生ずる観念は「乳酸菌についての科学的知識と肌の構造についての科学的知識を掛け合わせたもの(商品)」であり、引用商標から生ずる観念である「肌の構造についての科学的知識(を利用した商品)」とは相違する。
以上によれば、本願商標と引用商標は、外観、称呼及び観念のいずれにおいても類似せず、相紛れるおそれのないものである。
イ 仮に、本願商標の下段部分を抽出し、当該部分のみを引用商標と比較して商標の類否を判断するとしても、本願商標の構成を踏まえると、本件においては、図形部分を含む下段部分全体を引用商標と比較して商標の類否を判断すべきである。そして、下段部分全体と引用商標とでは、称呼が共通し、観念が共通する(又は比較し得ない)ものの、外観については、下段部分が、図形内に「肌構造」と「サイエンス」という、異なる大きさの文字を上下二段に表して成る構成であるのに対し、引用商標は、「肌構造サイエンス」という、同じ大きさの文字を一段で横書きして成る構成であり、取引者や需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すると、本願商標の下段部分と引用商標を同一又は類似の商品に使用しても、商品の出所について誤認混同が生ずるおそれはない。
ウ したがって、本願商標は、引用商標と類似するものではなく、商標法4条1項11号には該当しない。
2 被告の主張
次のとおり、本願商標の商標法4条1項11号該当性に係る本件審決の判断に誤りはない。
⑴ 本願商標
ア 本願商標の構成中、上段部分及び下段部分の各文字部分は、その間に「×」の記号を配し、一定の間隔を空けて重なり合うことなく配置され、全体として不自然に縦長になっていることもあり、それぞれ視覚上分離して認識される。また、文字部分を囲む図形部分も、各文字部分を区切ることにより、それぞれが独立した構成要素であることを強調するような視覚的効果が生ずる上、図形部分の構成も、円図形内のデザインや模様、文字が相違し、必ずしも統一した印象を与えるものではない。
そうすると、本願商標は、その外観上の特徴から、「乳酸菌サイエンス」の文字部分と「肌構造サイエンス」の文字部分が、それぞれ視覚上分離し、独立した構成要素であるとの印象を与えるものである。
イ 本願商標の構成文字である「乳酸菌サイエンス」、「肌構造サイエンス」は、それぞれ、各語の語義を結合した「乳酸菌の科学」、「肌の構造についての科学」ほどの漠然とした意味合いを想起させる。これには「サイエンス(科学)」に関する語という漠然とした共通性があるものの、具体的な関連性はなく、全体として何らかの一連一体の語となるものでもない。したがって、「乳酸菌サイエンス」の文字部分と「肌構造サイエンス」の文字部分には、それらを常に一体のものと把握しなければならないほどの観念上の関連性はないというべきである。
ウ さらに、本願商標の構成中、「×」の記号は、乗数を示すために用いられる、ありふれた記号であり、それ自体に自他商品の出所識別標識として機能し得るような特徴はない。そして、商取引においては、いわゆるコラボ商品等を中心として、複数の独立したブランド名又は名称を併記する際、その間に「×」の記号を配置する表示が広く採択、採用されている。
エ 本願商標は、その構成や、「×」の記号の使用方法に関する取引の実情を踏まえると、取引者や需要者をして、「乳酸菌サイエンス」と「肌構造サイエンス」という独立したブランド名や名称を併記するために、それらの間に「×」の記号を配置し区切って成るものと一見して看取し得るもので、各文字部分は、それぞれ出所識別標識として独立した構成要素であるとの印象を与えるものであるから、本願商標の各構成部分を分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているとはいえない。
そして、本願商標の構成中、「肌構造サイエンス」の文字部分及び「乳酸菌サイエンス」の文字部分は、いずれも指定商品との関係において、商品の品質等を具体的に表示するものではないから、出所識別標識としての機能を相応に備える要部といえる。
したがって、本願商標は、その要部の一つである下段部分の「肌構造サイエンス」の文字部分に相応して、「ハダコウゾウサイエンス」の称呼を生じ、「肌の構造についての科学」ほどの観念を生ずる。
⑵ 引用商標
引用商標は、「肌構造サイエンス」の文字を標準文字で表して成るもので、その構成文字に相応して、「ハダコウゾウサイエンス」の称呼を生じ、「肌の構造についての科学」ほどの観念を生ずる。
⑶ 本願商標と引用商標の類否
本願商標と引用商標は、全体としては、「乳酸菌サイエンス」の文字部分や「×」の記号の有無等の差異があるものの、本願商標の要部の一つである「肌構造サイエンス」の文字部分と引用商標は、構成文字を全て共通にするものであるから、文字を装飾する円図形の有無、書体等の微差にかかわらず、記憶に残る印象において似通ったものとなり、外観において相紛らわしい。
また、本願商標の要部の一つである「肌構造サイエンス」の文字部分と引用商標とでは、「ハダコウゾウサイエンス」との称呼、「肌の構造についての科学」との観念を共通にする。
以上のとおり、本願商標と引用商標は、その要部の比較において外観が相紛らわしく、称呼及び観念が共通することから、取引者や需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すると、商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあり、類似する商標といえる。
第4 当裁判所の判断
当裁判所は、本願商標は、引用商標と非類似の商標であり、商標法4条1項11号に該当しないと判断する。その理由は、次のとおりである。
1 商標の類否の判断、分離観察の可否について
商標法4条1項11号に係る商標の類否は、対比される両商標が同一又は類似の商品又は役務に使用された場合に、その商品又は役務の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが、それには、そのような商品又は役務に使用された商標が、その外観、観念、称呼等によって取引者や需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべきであり、しかも、その商品又は役務に係る取引の実情を明らかにし得る限り、その具体的な取引状況に基づいて判断するのが相当である(最高裁昭和43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁参照)。
また、商標は、その構成部分全体によって他人の商標と識別されるものであるから、複数の構成部分を組み合わせた結合商標について、その構成部分の一部を抽出し、この部分のみを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは原則として許されないというべきであるが、実際の取引において、各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められない商標については、常に必ずしも構成部分全体によって称呼、観念されるわけではなく、その一部のみによって称呼、観念されることがあることを踏まえると、商標の構成部分の一部が取引者や需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えると認められる場合や、それ以外の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められる場合などには、その構成部分の一部を要部として抽出し、その部分のみを他人の商標と比較して商標の類否を判断することも許されると解するのが相当である(最高裁昭和38年12月5日第一小法廷判決・民集17巻12号1621頁、最高裁平成5年9月10日第二小法廷判決・民集47巻7号5009頁、最高裁平成20年9月8日第二小法廷判決・裁判集民事228号561頁参照)。
2 本願商標について
⑴ 外観
本願商標は、別紙1「本願商標」記載1のとおりの構成から成り、上段に、外側から中央に向けて灰色から白色にグラデーションが施された円図形内に「乳酸菌」と「サイエンス」の文字を上下二段に同じ幅で表し、中段に「×」の記号を配し、下段に、グラデーションが施された灰色の線で描かれた年輪様の円図形内に「肌構造」と「サイエンス」の文字を上下二段に同じ幅で表して成る結合商標である。そして、本願商標の上段部分の円図形と下段部分の円図形の大きさは同一であり、上段部分の「乳酸菌」と下段部分の「肌構造」の書体、文字数及び大きさは同一である。さらに、上段部分の「サイエンス」と下段部分の「サイエンス」の書体及び大きさも同一である(以下、これらを「本願商標の外観上の特徴」という。)。
⑵ 称呼
本願商標の上段部分からは「ニュウサンキンサイエンス」との、中段部分からは「カケル」との、下段部分からは「ハダコウゾウサイエンス」との称呼が生じ、本願商標の構成部分全体からは「ニュウサンキンサイエンスカケルハダコウゾウサイエンス」との称呼が生ずる。
⑶ 観念
「乳酸菌」は「乳酸発酵に関与する細菌」(乙4)との、「サイエンス」は「科学」(乙5)との、「肌」は「人などの体の表面」(乙6)との、「構造」は「いくつかの材料を組み合わせてこしらえられたもの、又はそのしくみ、「くみたて」(乙7)との意味を有し、「×」は、掛け合わせる意味を有する乗算記号であるから、本願商標の構成中、上段部分からは「乳酸発酵に関与する細菌である乳酸菌に関する科学的知見」ほどの、中段部分からは「掛け合わせる」ほどの、下段部分から「人などの体の表面である肌のしくみ、くみたてに関する科学的知見」ほどの観念が生じ、本願商標の構成部分全体からは「乳酸菌に関する科学的知見と、肌の構造に関する科学的知見とを、掛け合わせたもの(商品)」ほどの観念が生ずると認められる。
3 引用商標
引用商標は、別紙2「引用商標」記載1のとおりの構成から成り、「肌構造サイエンス」の文字を標準文字で横書きして成るもので、引用商標からは「ハダコウゾウサイエンス」との称呼が生じ、「肌の構造についての科学的知見(を利用した商品)」ほどの観念が生ずると認められる。
4 本願商標と引用商標の類否
⑴ 以上を踏まえて、本願商標と引用商標の類否を検討すると、本願商標は、上段に、外側から中央に向けて灰色から白色にグラデーションが施された円図形内に「乳酸菌」と「サイエンス」の文字を上下二段に同じ幅で表し、中段に「×」の記号を配し、下段に、グラデーションが施された灰色の線で描かれた年輪様の円図形内に「肌構造」と「サイエンス」の文字を上下二段に同じ幅で表して成るものであるのに対し、引用商標は、「肌構造サイエンス」の文字を標準文字で横書きして成るものであるから、本願商標と引用商標が、外観において相違することは明らかである。
また、本願商標の構成部分全体からは「ニュウサンキンサイエンスカケルハダコウゾウサイエンス」との称呼が生じ、「乳酸菌に関する科学的知見と、肌の構造に関する科学的知見とを、掛け合わせたもの(商品)」ほどの観念が生ずるのに対し、引用商標からは「ハダコウゾウサイエンス」との称呼が生じ、「肌の構造についての科学的知見(を利用した商品)」ほどの観念が生ずるのであって、本願商標と引用商標は、称呼においても観念においても類似するとはいえない。
そうすると、本願商標及び引用商標が、その外観、観念、称呼等によって取引者や需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察しても、両商標が同一の商品に使用された場合に、その商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるとは認められず、本願商標と引用商標は、非類似の商標というべきである。
⑵ この点、被告は、本願商標と引用商標は、その要部の比較において外観が相紛らわしく、称呼及び観念が共通することから、商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがある旨の主張をする。
しかしながら、前記のとおり、商標は、その構成部分全体によって他人の商標と識別されるものであるから、複数の構成部分を組み合わせた結合商標について、その構成部分の一部を抽出し、この部分のみを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは、商標の構成部分の一部が取引者や需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えると認められる場合や、それ以外の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められる場合などを除き、原則として許されないというべきである。
これを本件について見ると、本願商標は、別紙1「本願商標」記載1のとおりの構成から成るところ、その外観、称呼、観念に照らすと、本願商標の下段部分の文字部分(「肌構造サイエンス」)のみが独立して見る者の注意をひくように構成されていて、同部分が取引者や需要者にその指定商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認めるのは困難である。また、本願商標の構成中の図形部分や、ありふれた乗算記号である「×」の記号はともかく、上段部分の文字部分(「乳酸菌サイエンス」)については、これを商品の品質等を普通に用いられる方法で表示するものとはいえず、そこからは、「ニュウサンキンサイエンス」との称呼、及び、「乳酸発酵に関与する細菌である乳酸菌に関する科学的知見」ほどの観念が生ずるのであって、指定商品との関係において、下段部分の文字部分以外の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認めるのも困難である。そして、実際の取引において、本願商標が下段部分の文字部分のみによって称呼、観念されているなどの実情にあることを認めるに足りる証拠はない。
そうすると、本願商標の外観上の特徴に加え、その構成部分全体から生ずる称呼がやや冗長であることや、商取引においては、コラボ商品等を中心として、複数の独立したブランド名又は名称を併記する際、その間に「×」の記号を配置する表示が広く採択、採用されていること(乙8~17)を併せ考慮しても、本件において、本願商標の下段部分の文字部分のみを引用商標と比較して商標の類否を判断することは許されず、その構成部分全体を引用商標と比較して商標の類否を判断すべきである。被告の主張は、前提を異にするもので、採用することができない。
5 商標法4条1項11号該当性
以上によれば、本願商標は、引用商標と非類似の商標であり、商標法4条1項11号に該当しないというべきであるから、本件審判請求を成り立たないものとした本件審決の判断には誤りがある。
第5 結論
よって、原告の請求は理由があるから、これを認容することとして、主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第2部
(裁判長裁判官 森冨義明 裁判官 菊池絵理 裁判官 頼晋一)
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