令和8年3月11日判決言渡
令和7年(ネ)第10072号 損害賠償請求控訴事件
(原審・東京地方裁判所令和6年(ワ)第70579号)
口頭弁論終結日 令和8年1月21日
判 決
控 訴 人 アコロテックジャパン株式会社
同訴訟代理人弁護士 大 熊 裕 司
被 控 訴 人 株式会社パイプ環境サービス
同訴訟代理人弁護士 増 田 智 之
小 林 浩 暉
主 文
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
事 実 及 び 理 由
(略語は原判決の例による。)
第1 控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。2 被控訴人は、控訴人に対し、2000万円及びこれに対する令和6年12月19日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
1 本件は、控訴人が、被控訴人による「SUPER JET BUBBLE」の標章(被告標章1)をトラックに付する使用及び被控訴人のウェブページ上での同標章又は「ジェットバブル」の標章(被告標章2)の使用が、本件商標(「ジェットバブル」)の商標権(本件商標権)を侵害すると主張して、被控訴人に対し、商標法38条3項及び民法703条に基づき、損害賠償金1560万円及び利得金の一部である440万円の合計2000万円並びにこ
5 れに対する訴状送達の日の翌日である令和6年12月19日から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。2 原判決は、控訴人が被控訴人による被告標章1及び2の使用を黙示に許諾していたと認め、本件商標権侵害があったとはいえないとして控訴人の請求を全部棄却したところ、控訴人がこれを不服として控訴をした。3 前提事実、争点及び争点に関する当事者の主張は、当審における控訴人の補充的主張を以下に補足するほか、原判決「事実及び理由」第2の1及び2並びに第3(2頁~)に記載のとおりであるから、これを引用する。【控訴人の補充的主張】(争点1・黙示の許諾の有無について)原判決は、被控訴人による被告標章1及び2の使用開始から約18年間、控訴人がその使用の中止を求めなかったことを主たる根拠として、本件警告書の送付まで黙示に上記標章の使用を許諾していたと認定したが、控訴人代表者は、本件警告書を送る約半年前の令和4年4月頃になって初めて本件商標の無断使用を明確に認識したのであり、侵害の事実を認識しながらこれを放置していたのではない。控訴人代表者としては、経営していた日本ジェッターズの借入金返済のために本件トラック2を平成16年に代物弁済した後、被控訴人が車両に付された他社の名称や本件商標を自社の表示に変更すると信頼していたのであり、無断使用という背信的行為を継続するとは想定していなかった。控訴人代表者は、侵害の事実を認識した後、被控訴人の従業員に対して口頭で使用中止を申し入れ、最終的に本件警告書を送付するに至ったのである。商標法における黙示の承諾は、単なる不指摘だけでは足りず、権利者が侵害の事実を知りながらこれを積極的に容認するかのごとき特段の事情が存在する場合に初めて認められるものであり、本件ではそのような事情は存在しない。
第3 当裁判所の判断
1 当裁判所も、控訴人は、被控訴人による被告標章1及び2の使用を黙示に
許諾していたと認められ、本件商標権侵害があったとはいえないから、その
5 余の点を論ずるまでもなく、控訴人の請求は理由がないものと判断する。そ
の理由は、後記2において争点1に関する控訴人の補充的主張に対する判断を加えるほか、原判決「事実及び理由」第4(8頁~)に記載のとおりであるから、これを引用する。
2 控訴人の補充的主張について
(1) 控訴人は、被控訴人に対して本件トラック2を譲渡して以降、令和4年
4月頃まで、被控訴人による被告標章1及び2の使用を知らなかったとし、黙示の許諾をしていないと主張し、控訴人代表者は同主張に沿う内容の陳述(甲8)をする。
(2) しかし、上記1の引用に係る認定事実によれば、控訴人代表者が代表者
を務めていた日本ジェッターズが被控訴人に対して本件トラック2を譲渡した際、当該車両に被告標章1が既に付されていた(認定事実イ)。そして、当該譲渡の際、控訴人代表者が被控訴人に対して被告標章1の表示を変更するように指示したなどの事実を認めるに足りる証拠はない。また、被控訴人は、平成16年頃から、自身のウェブページ上に被告標章2を使用しているところ、控訴人代表者は、この頃から自ら営業活動をして被控訴人に対して工事案件を紹介し、ジェットバブル車の使用方法の技術指導も行っている(認定事実ウ)。そして、日本ジェッターズが作成したジェットバブル工法のパンフレットには、問い合わせ先として被控訴人の住所が記載されている(認定事実エ)。また、控訴人代表者は、ジェットバブル工法に関する洗浄方法及び洗浄装置についての本件特許を出願した後、平成24年3月26日に出願名義を被控訴人に変更する旨の届出をし、最終的には発明者を控訴人代表者、特許権者を被控訴人として登録が行われている(認定事実オ)。さらに、被控訴人は、令和元年7月2日及び令和3年3月9日、控訴人の関連会社である環境アコロから依頼を受け、本件トラック1及び2を用いて作業を行っているところ、環境アコロの作業の依頼担当者及
5 び現場担当者は控訴人代表者であった(認定事実カ)。
以上によると、控訴人代表者と被控訴人は、平成16年以降、令和4年12月15日付け本件警告書発出までの約18年にわたり、互いに協力しながらジェットバブル工法の高圧洗浄事業を行ってきたのであり、被控訴人が被告標章1及び2を使用していることを控訴人代表者が知らなかったとは到底考え難い。これに反する控訴人代表者の陳述は採用できない。
(3) その上で、控訴人は、約18年もの長期間にわたって何らの異議を述べ
ていなかったのであるから、控訴人は、本件トラック2を譲渡した当初から、被控訴人が、ジェットバブル工法の高圧洗浄事業において、被告標章1及び2を無償で使用することを黙示に許諾していたと認めるのが相当である。よって、控訴人の前記主張は採用することができない。
3 結論
以上によれば、控訴人の請求を棄却した原判決は相当であり、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。知的財産高等裁判所第4部裁判長裁判官長 谷 川 浩 二裁判官岩 井 直 幸裁判官安 岡 美 香 子
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