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9月6日
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令和8年1月27日判決言渡


令和7年(行ケ)第10085号 審決取消請求事件


口頭弁論終結日 令和7年12月10日


判 決


原 告 株式会社フィジテック


同訴訟代理人弁理士 高 橋 孝 仁


被 告 特 許 庁 長 官


同指定代理人 中 島 光


大 島 康 浩


吉 田 聡 一


主 文


1 原告の請求を棄却する。


2 訴訟費用は原告の負担とする。


事実及び理由


第1 請求


特許庁が不服2024-8713号事件について令和7年7月10日にした審決を取り消す。


第2 事案の概要


本件は、商標登録拒絶査定不服審判請求を不成立とした審決の取消訴訟である。争点は、商標法3条1項3号及び4条1項16号該当性である。1 特許庁における手続の経緯等


(1) 原告は、令和5年2月2日に商標登録出願がされた「ヘルスジム」の文字を標準文字で表してなる商標(以下「本願商標」という。)につき、同年8月30日、商標法10条1項の規定による分割出願として、指定役務を第41類に属する願書記載のとおりの役務とする商標登録出願(以下「本願」という。)をした。原告は、その後、本願商標の指定役務を第41類に属する審決別掲1記載のとおりの役務に変更した(甲9。本判決では、書証の掲記に際して枝番号の記載を省略する。)。本願商標の指定役務には、「トレーニングジムの提供」、「スポーツの興行の企画・運営又は開催」等が含まれている。


(2) 原告は、令和6年2月16日付けで、本願商標が商標法3条1項3号及び4条1項16号に該当するとして拒絶査定を受けたので、拒絶査定不服審判請求(不服2024-8713号事件)をしたが、特許庁は、令和7年7月10日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をして、その謄本は、同年8月4日に原告に送達された。


(3) 原告は、令和7年9月2日、本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起した。2 本件審決の理由の要旨本願商標は、「ヘルスジム」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中の「ヘルス」の文字は、「健康。」(広辞苑第七版)等の意味を有する語であり、「ジム」の文字は、「室内トレーニング施設。」(同)等の意味を有する語である。審査段階で示された事実及び審判段階における職権調査によると、本願の指定役務と関連する分野において、健康の促進・維持等のための各種トレーニングをすることができる健康機器や運動器具を備えた施設が提供されており、当該施設が「ヘルスジム」と称されている実情が認められる。以上を踏まえると、本願商標は、構成文字全体として「健康のためのトレーニング施設」程の意味合いを認識させるものである。そうすると、本願商標を本願指定役務に使用した場合、これに接する取引者、需要者は、その役務が「健康のためのトレーニング施設」に係る役務であること、すなわち、単に役務の質(内容)を普通に用いられる方法で表示したものとして認識し、本願商標を「健康のためのトレーニング施設」に係る役務以外の役務に使用するときは、役務の質の誤認を生じさせるおそれがあるというのが相当である。よって、本願商標は、商標法3条1項3号及び4条1項16号に該当する。


第3 原告主張の審決取消事由


1 取消事由1(商標法3条1項3号該当性判断の誤り)


(1) 本願商標から生じる意味の認定の誤り


本願商標を構成する「ヘルスジム」の文字からは、抽象的な意味しか生じず、本件審決が認定するような「健康のためのトレーニング施設」という具体的な意味は生じない。すなわち、本願商標は「ヘルスジム」という一体の語であり、全体として特定の語義を有しない一種の造語と理解されるものであって、「ヘルス」と「ジム」に分断して把握すべき理由はない。仮に、「ヘルス」と「ジム」とに分断して、それぞれの意味を「健康」及び「トレーニング施設」と把握するとしても、構成全体からは、「健康のトレーニング施設」といった抽象的な意味しか生じず、「健康になれるトレーニング施設」や「健康的なトレーニング施設」等、複数の漠然とした観念が生じる。このように、本願商標は、役務の意味や雰囲気を漠然・抽象的に想起させるものの、役務の特性表示として一般に用いられるものではない。このような商標は、一般に自他識別力を有するものとして市場で承認されているから、本願商標も自他識別力を有するというべきである。


(2) 取引の実情の認定の誤り


本件審決は、「健康の促進・維持のための各種トレーニングをすることができる健康機器や運動器具を備えた施設が「ヘルスジム」と称されている」と認定したが、そのような一般的な実情は存在しない。本件審決が根拠とした証拠は薄弱であり、本件訴訟において被告が提出した証拠を加えても、このような実情を、一般的・恒常的な取引の実情として認定することはできない。すなわち、本件審決が掲げた証拠によると、「ヘルスジム」の使用例は、昭和58年から本件審決(令和7年)までの約40年間でわずか19件程度が見つかるにとどまり、その中には、既に実在しない施設の説明や、特定の個人が発信するにすぎないものまであるから、一般的・恒常的な取引の実情を認定するには不十分である。そして、被告が本件訴訟において提出した証拠は、「ヘルスジム」とは全く構成の異なる「健康ジム」の使用例であり、「ヘルスジム」の使用例を実質的に追加するものではない。「健康ジム」の使用例によって「ヘルスジム」の使用に関する実情を認定することは許されない。


(3) 小括


以上のとおり、本願商標をその指定役務について使用したとしても、取引者、需要者は、これを単なる役務の質(内容)その他の特徴を表示するものとして認識するとはいえない。よって、本願商標は、指定役務の質その他の特徴を普通に用いられる方法によって表示する標章のみからなる商標とはいえず、商標法3条1項3号に当たらない。本件審決は、同号該当性の判断を誤ったものであり、取り消されるべき違法がある。


2 取消事由2(商標法4条1項16号該当性判断の誤り)


上記1のとおり、本願商標は、役務の質その他の特徴を表示する文字には当たらず、「ヘルスジム」の文字は特定の意味を生じないか、せいぜい「健康のトレーニング施設」といった抽象的な意味しか生じない。よって、本願商標をその指定役務について使用したとしても、取引者、需要者において、役務の質の誤認を生ずるおそれがあるとはいえないから、本願商標は、商標法4条1項16号に当たらない。本件審決は、同号該当性の判断を誤ったものであり、取り消されるべき違法がある。


第4 被告の反論


1 取消事由1に対する反論


本願商標は、「ヘルスジム」の文字を標準文字で表してなるところ、「ヘルス」は「健康」を、「ジム」は「室内トレーニング施設」を意味する平易な外来語であり、共に「ヘルス○○」、「○○ジム」のように、複合語の一部としてよく用いられている(乙1~12)。本願商標の指定役務の取引分野においては、トレーニングマシンやエアロバイク等の健康機器や運動器具を備え、健康(維持、促進)のためにトレーニングを行う施設として、「ヘルスジム」や「健康ジム」と称するジムが多数存在する実情が認められる(乙13~55)。このような本願商標の構成文字の語義や、その指定役務に係る取引の実情を踏まえると、本願商標は、構成文字全体として「健康のためのジム」程度の意味合いを容易に認識、理解させるものであるから、取引者、需要者によって、役務の質(内容)を表示したものと一般に認識されるにとどまる。したがって、本願商標は、商標法3条1項3号に該当する。


2 取消事由2に対する反論


上記1に主張した本願商標から生じる意味合いからすると、本願商標が「健康のためのジム」と関連する役務以外の指定役務について使用されたときは、役務の質の誤認を生ずるおそれがある。したがって、本願商標は、商標法4条1項16号に該当する。


第5 当裁判所の判断


1 取消事由1(商標法3条1項3号該当性判断の誤り)


(1) 商標法3条1項3号について


商標法3条1項3号に掲げる商標が商標登録の要件を欠くとされているのは、これらの商標が、指定商品又は指定役務との関係で、取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものであるから、特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに、一般的に使用される標章であって、多くの場合自他商品識別力を欠き、商標としての機能を果たし得ないものであることによるものである(最高裁昭和53年(行ツ)第129号同54年4月10日第三小法廷判決・裁判集民事126号507頁参照)。そうすると、ある商標が、その指定役務について役務の質、態様その他の特徴(以下「質等」という。)を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であるというためには、当該商標が当該役務との関係で役務の質等を表示記述するものであって、当該商標が当該役務に使用された場合に、取引者、需要者により、将来を含め、役務の質等を表示したものとして一般に認識されるものであれば足りる。そして、当該商標の取引者、需要者によって当該役務に使用された場合に役務の質等を表示したものと一般に認識されるかどうかは、当該商標の構成やその指定役務に関する取引の事情を考慮して判断すべきである。


(2) 本願商標の構成


本願商標は、「ヘルスジム」の文字を標準文字で表してなるものである。ここで、「ヘルス」は「健康」(乙1:広辞苑第七版、乙2:大辞林第四版)、「ジム」は「室内トレーニング施設」(乙3:広辞苑第七版)、「トレーニングのための屋内施設」(乙4:大辞林第四版)を意味する語として、いずれも辞書に載録され、外来語由来ではあるが我が国において広く用いられるなじみの深い語である。そして、上記辞書の記載によると、「ヘルス」の語は、「ヘルスセンター」、「ヘルスケア」及び「ヘルスツーリズム」のように、語の後ろに名詞を組み合わせて「健康のための○○」を示す用法が慣用されていると認められる。また、証拠(乙5~12)によると、「ジム」の語は、それ自体「健康増進、維持を目的とする屋内運動施設」を示す用語として使用されるほか、「フィットネスジム」、「パーソナルジム」及び「リハビリジム」のように、語の前に名詞又は形容詞を組み合わせて「○○といった特徴を有する屋内トレーニング施設」を示す用法が慣用されていると認められる。そうすると、本願の指定役務の取引者、需要者というべき一般消費者は、「ヘルスジム」との文字列から、「健康のための屋内トレーニング施設」との意味合いを容易に想起するものといえる。


(3) 取引の実情


以上の点は、本願の指定役務に関する取引の実情からも裏付けることができる。すなわち、証拠(乙13~20、24~26、35、36、38~40、43、44、48)によると、全国版・地方版を問わない新聞記事、地方公共団体の広報紙、不動産開発会社や旅行代理店のウェブサイト、店舗検索ウェブサイト、インターネット上のニュースサイトやブログ等において、「ヘルスジム」の語が、「健康のための屋内トレーニング施設」といった意味合いを示す用語として、特段の語句の説明もなく、相当程度使用されていることが認められる。このことは、本願の指定役務の取引者、需要者において、「ヘルスジム」の文字列から、「健康のための屋内トレーニング施設」との意味合いを容易に想起することを裏付ける実情ということができる。


(4) 検討


以上によると、本願商標は、「トレーニングジムの提供」等を含むその指定役務との関係で、役務の質(内容)を表示記述するものであって、本願商標が当該指定役務に使用された場合に、取引者、需要者により、将来を含め、役務の質(内容)を表示したものと一般に認識されるものである。そして、本願商標は、「ヘルスジム」の文字を標準文字で表してなるものであり、特段、識別力を獲得するための他の要素は加えられていない。したがって、本願商標は、その指定役務について役務の質(内容)を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であるといえるから、商標法3条1項3号に該当する。


(5)


(原告の主張)


についてア 原告は、「ヘルスジム」の文字からは、抽象的な意味が生ずるのみであって、「健康のためのトレーニング施設」という具体的な意味は生じないと主張する。しかし、「ヘルスジム」を構成する「ヘルス」及び「ジム」が、それぞれ「健康」及び「室内トレーニング施設」を意味する語として、我が国において広く用いられるなじみの深い語であること、これらの語がいずれも他の語と組み合わせて使用される用法が慣用されていることは前記(2)のとおりであるから、本願商標の指定役務の取引者、需要者は、「ヘルスジム」との構成から、「ヘルス」及び「ジム」の各語の意味をそれぞれ想起し、全体として「健康のための屋内トレーニング施設」との意味合いを容易に想起するといえる。


(原告の主張)


は採用することができない。イ 原告は、健康の促進・維持のための各種トレーニングをすることができる健康機器や運動器具を備えた施設が「ヘルスジム」と称されているという一般的・恒常的な実情は存在しないと主張する。しかし、「ヘルスジム」という語の実際の使用例が多数とまではいえないとしても、「ヘルスジム」が、「健康のための屋内トレーニング施設」といった意味合いを示す用語として、特段の語句の説明もなく相当程度使用されていることは前記(3)のとおりであって、これらが一般消費者への説明として成り立っていることは、取引者、需要者が「ヘルスジム」との構成から「健康のためのトレーニング施設」との意味合いを容易に想起することを裏付ける実情ということができる。


(原告の主張)


は採用することができない。


(6) 小括


以上のとおり、本願商標は、商標法3条1項3号に該当するから、商標登録を受けることができない。原告主張の取消事由1には理由がない。


2 結論


そうすると、本願商標は商標登録を受けることができない商標であるから、原告主張の取消事由2の理由の有無により本件審決の結論は左右されない。したがって、取消事由2について判断するまでもなく、拒絶査定不服審判請求を成り立たないとした本件審決に取り消されるべき違法はない。よって、原告の請求は理由がないから、これを棄却することとして、主文のとおり判決する。知的財産高等裁判所第1部裁判長裁判官増 田 稔裁判官伊 藤 清 隆裁判官天 野 研 司

 
 
 

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