top of page
  • 9 時間前
  • 読了時間: 27分

原 告

一般社団法人焼き餃子協会


同訴訟代理人弁護士

河部 康弘


被 告

一 般 社 団 法 人 餃 子 屋 連 盟 會

( 以 下 「 被 告 連 盟 會 」 と い う 。 )


被 告


株式会社 PROJECT963

(以下「被告 963」という。)


被告ら訴訟代理人弁護士

滝田 三良

同 齊藤 好明

同 小室 未来


主文


 1 原告の請求をいずれも棄却する。

 2 訴訟費用は原告の負担とする。 

 

事実及び理由


第1 請求

 1 被告らは、別紙被告標章目録記載の標章を広告に付してはならない。

 2 被告らは、別紙被告ウェブサイト目録記載の各ウェブサイトから、別紙被告標章目録記載の各標章を削除せよ。

 3 被告らは、原告に対し、連帯して60万5000円及びこれに対する令和7年2月17日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。

 4 被告963は、原告に対し、96万8000円及びこれに対する令和7年2月17日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要

 本件は、原告が、被告らが餃子に関するイベントにおいて別紙被告標章目録記載の各標章(以下、同目録記載の順に「被告標章1」などといい、これらを併せて「被告各標章」という。)を使用する行為が、原告の別紙原告商標目録記載の登録商標(以下「原告商標」という。)に係る商標権(以下「原告商標権」という。)を侵害する(商標法(以下「法」という。)37条1項1号)と主張して、被告らに対し、商標権に基づく被告各標章の使用の差止め(法36条1項)及び別紙被告ウェブサイト目録記載の各ウェブサイトからの被告各標章の削除(同条2項)、不法行為(民法709条及び719条、損害額につき法38条2項)に基づく60万5000円の損害賠償及びこれに対する令和7年2月17日(訴状提出日)から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金の支払を求めるとともに、被告963に対し、不法行為(同上)に基づく96万8000円の損害賠償及びこれに対する令和7年2月17日(同上)から支払済みまで年3分の割合による遅延損害金の支払を請求する事案である。

 1 前提事実(証拠等を掲記しない事実は、当事者間に争いがないか、弁論の全趣旨により容易に認められる。なお、書証の番号は特に断らない限り枝番号を含む(以下同じ。)。)

  (1) 当事者

   ア 原告は、餃子に関するイベントの開催、餃子に関する商品開発、マーケティングのコンサルティング等を業とする一般社団法人である。

   イ 被告連盟會は、餃子をはじめとする食文化の保護及び振興事業、餃子に関する情報提供事業、餃子業界の発展を支援するための情報提供事業、レストラン、料理教室等の事業者の支援事業、フェスティバル、コンテスト等のイベントの企画、運営を業とする一般社団法人である。

   ウ 被告963は、飲食店の経営、飲食店、物販店等各種店舗開発の企画及び経営コンサルティング、食料品及び飲料品の卸売業並びに小売業等を業とする株式会社である。

  (2) 原告商標権

   ア エナジャイズ株式会社(以下「エナジャイズ」という。同社の代表者は原告代表者と同じである。)は、平成28年4月7日、原告商標に係る商標登録出願(商願2016-45199号。以下「本件出願」という。)をした。その出願時の指定役務は、以下のとおりである。(乙2)

 ・第35類

 ウェブサイト上の広告用スペースの貸与、ウェブサイト上の広告用スペースの提供、ウェブサイトによる広告、電子メールによる広告、広告の代理、旅行に関する広告、その他の広告、広告用具の貸与、商品又は店舗の売上ランキング又は人気ランキングに関する情報の提供、商品の販売に関する情報の提供、飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供

 ・第41類

 電子出版物の提供、書籍の制作、放送番組の制作、イベントの企画・運営又は開催、映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営

 ・第43類

 飲食物の提供、飲食物に関する情報の提供、業務用加熱調理機械器具の貸与、業務用食器乾燥機の貸与、業務用食器洗浄機の貸与、加熱器の貸与、食器の貸与、調理台の貸与、流し台の貸与

   イ 本件出願について特許庁より拒絶査定を受けたことから、しかけ株式会社(エナジャイズから商号変更。以下「しかけ社」という。)は、平成29年12月1日付け審判請求書により、上記拒絶査定に対する不服審判を請求する(以下「本件審判請求」という。)と共に、以下の手続を行った。(甲1、乙1の1、3、4)

 (ア) 本件出願に係る指定役務を、第41類「餃子に関する文化イベントの企画・運営又は開催」及び第43類「餃子を主とする飲食物の提供、餃子を主とする飲食物に関する情報の提供」とする手続補正書を提出した。

 (イ) 本件出願に係る指定役務のうち、第35類「ウェブサイト上の広告用スペースの貸与、ウェブサイト上の広告用スペースの提供、ウェブサイトによる広告、電子メールによる広告、広告の代理、旅行に関する広告、その他の広告、広告用具の貸与、商品又は店舗の売上ランキング又は人気ランキングに関する情報の提供、商品の販売に関する情報の提供、飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」、第41類「電子出版物の提供、書籍の制作、放送番組の制作、映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営」及び第43類「業務用加熱調理機械器具の貸与、業務用食器乾燥機の貸与、業務用食器洗浄機の貸与、加熱器の貸与、食器の貸与、調理台の貸与、流し台の貸与」について、商標登録出願の分割出願を行った(以下「本件分割出願」という。)。

   ウ 特許庁は、本件分割出願につき、商標登録の査定をし、平成30年3月2日、これを登録した。(甲1)

   エ 本件審判請求について、特許庁は、平成31年4月18日、原告商標は法3条1項3号に該当するとして、請求不成立の審決をした(以下「本件審決」という。)。その理由の要旨は、以下のとおりである。(乙5)

 原告商標は、「餃子フェス」及び、「Gyoza Festival」の文字を二段に書してなるところ、原告商標からは、全体として「餃子に関する催し物」程の意味合いが容易に認識される。また、様々な工夫を凝らして来場者に餃子を提供する催し物が「餃子フェス」、「餃子フェスティバル」のように称されて、開催されている。さらに、「食」をテーマにしたイベントが各地で開催されており、各種の料理、飲料を提供する催し物が、例えば「ラーメンフェス」のように、「〇〇フェス」のような形式で称されて開催されていたり、各種の料理等をテーマにした催し物の総称のように使用されている。このような状況から、原告商標をその指定役務に使用しても、これに接する需要者等は、「餃子に関する催し物」程の意味合いを容易に理解し、当該役務が、例えば「餃子を提供するイベント」のような「餃子に関する催し物」であること、すなわち、単に役務の質(内容)を表示したに過ぎないものと認識するにとどまり、自他役務の識別標識としては認識しないというのが相当である。

   オ 原告は、令和5年8月17日、しかけ社から、原告商標権を取得した。(甲1、2)

  (3) 被告らの各行為

   ア 本件イベント1

 被告963は、令和6年10月4日~同月7日の間、道の駅「やまがた蔵王」において、「全国ぐっと!!餃子フェス」と題するイベント(以下「本件イベント1」という。)を開催し、被告連盟會は、これを監修した。

 本件イベント1は、「道の駅やまがた蔵王にて初開催される本格餃子イベント!関東や関西で行われる大型餃子イベントに出店する人気餃子店がついに山形に集結!山形初出店の店も多数!普段なかなか食べられない有名店、人気店の餃子が焼き立てで食べられる」などと雑誌記事において紹介された。被告963は、本件イベント1につき、全国の餃子店から出店を募り、各出店店舗から出店料を得た。また、本件イベント1では、大道芸の興行等も行われた。

 上記雑誌記事、上記道の駅及び被告963のインスタグラムの各アカウント及び被告連盟會のウェブサイト上の本件イベント1の各広告において、被告標章1及び2が使用された。(甲3~6)

   イ 本件イベント2

 被告963は、令和6年12月20日~同月22日の間、JR福島駅東口の再開発エリアにおいて、「全国ぐっと!ラーメン祭りWith餃子フェス」ないし「全国ぐっと!ラーメン祭りWith全国ぐっと!餃子フェス.」と題するイベント(以下「本件イベント2」という。また、これと本件イベント1を併せて「本件各イベント」という。)を開催した。

 本件イベント2は、食品会社のウェブサイトの記事において、「北海道から沖縄まで、各地で人気のラーメンと餃子が大集合するイベント」などと紹介された。被告963は、本件イベント2につき、全国の餃子店からの出店を募り、各出店店舗から出店料を得た。

 上記記事を含む本件イベント2の各広告において、被告標章3及び4が使用された。(甲8、9)

 2 争点

  (1) 商標権侵害の成否(争点1)

   ア 原告商標と被告各標章の類否及び役務の類否(争点1-1)

   イ 被告各標章の商標的使用の有無(争点1-2)

  (2) 差止め及び削除の必要性(争点2)

  (3) 損害の有無及びその額(争点3)

 3 当事者の主張

  (1) 争点1-1(原告商標と被告各標章の類否及び役務の類否)について

 (原告の主張)

   ア 原告商標と被告標章1及び2の類似

 (ア) 被告標章1及び2のうち、「全国ぐっと!!」の「!」には、文章を終わらせる役割があるから、需要者は、「全国ぐっと!!」の部分と「餃子フェス」の部分は別のものであると認識する。また、「全国ぐっと!!」の部分はあずき色の枠に囲まれた白抜きの文字になっているのに対し「、餃子フェス」の部分は、白色の枠に囲まれたあずき色の文字になっているから、明らかに区別される。加えて、「全国ぐっと!!」の部分は、キャッチフレーズとして用いられている点で、「餃子フェス」の部分と役割が異なる。このことは、本件イベント2において、「全国ぐっと!ラーメン祭りWith餃子フェス」のように、「全国ぐっと!」が「餃子フェス」と関係なく冒頭に配置されていることによっても裏付けられる。実際に、本件イベント1に出演したパフォーマーの一人は、「『餃子フェス』…出演してきました!全国からたくさんの餃子が大集合した餃子フェス!」などと投稿している。

 以上の事情によれば、被告標章1及び2は、いずれも、各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているとはいえないから、「餃子フェス」部分を抽出して原告商標との類否判断をすることができる。

 (イ) 原告商標と被告標章1及び2につき分離観察した「餃子フェス」の部分は、称呼及び観念が一致するから、原告商標と被告標章1及び2は類似する。

 (ウ) 指定役務との類似性

 本件イベント1においては大道芸が行われたことから、被告963は、被告標章1ないし2を用いて、原告商標の指定役務である「映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営」に類似する役務を行っているといえる。また、本件イベント1においては全国各地の餃子が販売されているところ、被告963は、被告標章1ないし2を用いて、原告商標の指定役務である「飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」に類似する役務を行っているといえる。

 被告連盟會は、雑誌記事や自己のウェブサイト等に本件イベント1の広告を掲載したところ、被告連盟會が餃子に関するイベントを開催する法人であり、本件イベント1の監修をしていることから、本件連盟會は、被告標章1ないし2を用いて、原告商標の指定役務である「広告の代理」をしているといえる。

 (エ) 被告連盟會による共同不法行為又は幇助

 被告連盟會は、本件イベント1を監修していることから、被告963と共同不法行為を行っており、又は少なくとも被告963の不法行為を幇助している。

   イ 原告商標と被告標章3及び4の類似

 (ア) 原告商標と被告標章3は、称呼及び観念が一致するから、少なくとも類似する。

 (イ) 被告標章4のうち、「全国ぐっと!」の部分は、「餃子フェス」の部分に比して、文字の横幅が1/4程度、面積比は1/16程度となっている。また、「全国ぐっと!」の部分はキャッチフレーズとして用いられている。このことは、被告標章1及び2と同様の事情からもうかがわれる。

 以上の事情から、被告標章4は、各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものとはいえず、「餃子フェス.」の部分を抽出して原告商標との類否判断ができる。

 そうすると、原告商標と分離観察した被告標章4は、称呼及び観念が一致するから、類似する。

 (ウ) 指定役務の類似性

 本件イベント2においては全国各地の餃子が販売されているから、被告963は、原告商標の指定役務である「飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」に類似した役務を行っているといえる。

 (被告の主張)

   ア 原告商標と被告標章1及び2の非類似

 (ア) 原告商標は、「餃子フェス」及び「Gyoza Festival」の文字を二段に書して成るものであるから、「餃子フェス」の部分のみを分離観察すべき合理的理由はない。

 また、被告標章1及び2のうち、「全国ぐっと!!」の部分だけからは、商品の出所識別標識としての称呼及び観念が生じるものではないから、「全国ぐっと!!餃子フェス」は一連にして成るものであって、分離観察できるものではない。

 原告商標と被告標章1及び2の類似性は争う。

 (イ) 指定役務の非類似

 大道芸は、本件イベント1において付随的に実施されたものに過ぎず、被告963は、「餃子フェス」の名のもとに指定役務に類似した役務を行ったものではない。

   イ 原告商標と被告標章3及び4の類似

 (ア) 原告商標と被告標章3及び4の類似性はいずれも否認ないし争う。

 (イ) 原告商標は、「餃子フェス」及び「Gyoza Festival」の文字を二段に書して成るものであるから、「餃子フェス」の部分のみを分離観察すべき合理的理由はない。

 また、被告963が使用した標章は、「全国ぐっと!ラーメン祭りWith全国ぐっと!餃子フェス.」であり、「全国ぐっと!」の部分が「餃子フェス」と関係なく冒頭に配置されているものではない。

   ウ 指定役務の非類似

 本件イベント2において全国各地の餃子が販売されたことは認める。その余は否認ないし争う。

  (2) 争点1-2(被告各標章の商標的使用の有無)について

 (被告の主張)

 被告963は、被告標章1~4を含む標章「全国ぐっと!!餃子フェス」及び「全国ぐっと!餃子フェス.」を、餃子の提供を行うイベントにおいて使用したものであり、「映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営」及び「飲食料品の小売又は卸売りの業務において行われる顧客に対する便益の提供」として使用したものではない。

 本件イベント1の需要者は、あくまで餃子が提供されるイベントと認識して参加するのであり、大道芸の興行や付随する食品提供のイベントと認識して参加するものではない。本件イベント2の需要者も、あくまで餃子が提供されるイベントとして参加し、ラーメンについては「全国ぐっと!ラーメン祭り」の名のもとに参加している。このため、餃子の提供に付随するサービスや商品の表記に接した需要者が、本件各イベントを「興行の企画又は運営」や「顧客に対する便益の提供」として誤認混同することはない。

 また、被告連盟會との関係では、原告が主張する「監修」と「広告の代理」との結び付きは不明である。

 そもそも、「餃子フェス」の標章に接する需要者等は、単に役務の質(内容)を表示したに過ぎないものと認識するにとどまり、自他役務の識別標識として認識しない。そうである以上、被告各標章は、いずれも商標的使用に当たらない(法26条1項6号)。

 加えて、被告963が本件各イベントを開催したことにより、原告に「興行の企画又は運営」に係る機会の損失は発生していない。その意味でも、被告963による商標権侵害の事実は存在せず、そうすると、被告連盟會の記事発信による商標権侵害もない。

 (原告の主張)

 本件審決が識別力なしと判断したのは、あくまで、第41類のうち「餃子に関する文化イベントの企画・運営又は開催」及び第43類のうち「餃子を主とする飲食物の提供、餃子を主とする飲食物に関する情報の提供」である。本件においては、被告963との関係では、「映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営」及び「飲食料品の小売又は卸売りの業務において行われる顧客に対する便益の提供」が問題となっており、被告連盟會との関係では、「広告の代理」が問題となっている。

 本件イベント1においては、インスタグラムの投稿や広告の記載にあるとおり、大道芸の興行が行われており、「演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営」との関係では、「餃子フェス」の標章に識別力がある。その上、本件イベント1は、餃子に限らず、ラーメンやチュロス、りんご飴等の多様な食品を扱うイベントであるから、「飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」との関係では、「餃子フェス」の標章に識別力があるといえる。

 本件イベント2においては、餃子に限らず、日本各地のラーメン等の麺類に加え、ザンギ、たこ焼き、和菓子等の様々な食品を取り扱っているから、「飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」との関係では、「餃子フェス」の標章に識別力があるといえる。

 また、被告連盟會は、本件イベント1の「監修」をしており、被告963に代わって広告の編集等を行うことによって利益を得ているといえるから、「監修」としての「広告の代理」を行っているといえる。したがって、「広告の代理」との関係では、「餃子フェス」の標章に識別力があるといえる。

 以上より、被告各標章は、原告商標に係る指定役務の内容との関係で、識別力を有する商標の使用に当たる。

  (3) 争点2(差止め及び削除の必要性)について

 (原告の主張)

 被告らの行為は、原告商標権を侵害するから、同権利に基づき、被告各標章を広告に付すことによる使用を差し止め、また、各ウェブサイトから被告各標章を削除する必要がある。

 (被告の主張)

 否認ないし争う。

  (4) 争点3(損害の有無及びその額)

 (原告の主張)

   ア 被告963は、本件イベント1の開催により、出店した餃子店である10店舗から1店舗当たり10万円程度の出店料を得て、その一部を広告代理業務の対価として被告連盟會に支払っていると考えられる。また、被告963は、会場費や設備費を負担しており、その利益率は50%程度である。

 したがって、本件イベント1の開催により生じた損害額(法38条2項)は、被告らの利益の合計である50万円(=10万円×50%×10店舗)程度である。これに消費税相当額(5万円)及び弁護士費用相当額(5万5000円)を加えた60万5000円が本件イベント1に係る原告の損害額である。

   イ 被告963は、本件イベント2の開催により、出店したラーメン店7店舗、餃子店8店舗、和菓子店1店舗から1店舗当たり10万円程度の出店料を得ていると考えられる一方で、被告963は会場費や設備費を負担しており、利益率は50%程度である。

 したがって、本件イベント2の開催により生じた損害額(法38条2項)は、10万円×50%×16店舗=80万円程度であり、これに消費税相当額及び弁護士費用相当額を加えた96万8000円が本件イベント2に係る原告の損害額である。

   ウ なお、被告らは、本来であれば金銭を支払って原告からライセンスを受けなければ原告商標を使用することができなかったにもかかわらず、無断で使用したから、少なくとも、原告にはライセンス料相当額の損害が発生しており、損害がないとはいえない。

 (被告の主張)

 否認ないし争う。

 本件イベント1に係る損害について、被告らは被告標章1及び2を商標的に使用しておらず、原告に損害は発生していない。また、1店舗当たりの出店料は10万円ではなく、被告963がその一部を被告連盟會に支払ったこともない。

 本件イベント2に係る損害について、被告らは被告標章3及び4を商標的に使用しておらず、原告に損害は発生していない。また、1店舗当たりの出店料は10万円ではないし、本件イベント2は地方自治体からの要請で行われた町おこしイベントであり、会場費及び水道利用料は無償であった。設備費としてテント借入費用は発生したものの、被告963が出店者から集めた費用をこれに充てたため、被告963には利益が発生していない。

第3 当裁判所の判断

 1 原告商標と被告各標章との類否(争点1)

  (1) 被告標章1及び2について

   ア 被告標章1の使用状況

 (ア) 「道の駅やまがた蔵王」の運営会社は、その公式インスタグラムアカウントにおいて、当該道の駅で開催されるイベントの1つとして本件イベント1を紹介ないし告知している(甲3)。当該投稿は、「全国ぐっとdocument image餃子フェスdocument image」とのタイトルを付し、開催日時及び場所を記載すると共に、本件イベント1の広告ポスターと理解される画像(以下「本件画像1」という。)をも掲載している。被告標章1は、本件画像1の上部(全体の1/3程度)に配置された黒地の背景上に表示されたものであり、その「餃子フェス」の文字の直下には開催場所及び初開催である旨が、「フェス」の右横には餃子及びこれをつまんだ箸の先端部分イラストが、その下部には開催日程が、それぞれ記載されている。本件画像1の残りの部分のうち中央部分(全体の1/2程度)には、赤地の背景上に、「SDGsを考えよう!」との記載並びに監修者である被告連盟會のパンフレットないしチラシ風のイラスト及びQRコードの表示が右側(中央部分の左右方向1/3程度のスペース)に配置されているほかは、餃子とみられる画像6枚がこれを名物とする地域名と共に表示されている。最下部(全体の1/6程度)には、赤地の背景に重ねるように配置された緑の地色を背景として、「大道芸もやってくる!」との記載及びそのパフォーマンスの開催日程が左右方向に一行で記載され、その下部に出演予定者とみられる画像5枚が掲載されている。

 (イ) 被告標章1は、本件画像1の中で最も大きなフォントの白抜き文字に小豆色の枠囲みを施した「全国」及びこれよりやや小さいフォントで同様の装飾を施した「ぐっと!!」を横一列に配した文字部分と、「ぐっと!!」部分と略同じサイズのフォントの小豆色の文字に白色の枠囲みを施した「餃子フェス」の文字部分とを上下二段に配してなるものである。

 (ウ) 上記投稿のタイトル及び本文部分の記載内容並びに本件画像1の構成に鑑みると、被告標章1は、本件イベント1のイベント名として表示されたものと理解されるのであって、このほかに本件イベント1の名称を示すものとして理解し得る記載は見当たらない。

   イ 被告標章2の使用状況

 (ア) 「全国ぐっと!!餃子フェスin道の駅やまがた蔵王 初開催!!」と題するインターネット上の雑誌記事(甲4)は、被告連盟會のプレスリリースを掲載したものである。当該記事の1ページ目には、上記標題及び被告連盟會の名称と掲載日時に続き、「道の駅山形蔵王にて初開催される本格餃子イベント!」などとする紹介文に加え、餃子を箸でつまんだイラストが存在しない点、餃子等の画像部分が画像全体の下部2/3程度を占める点及び大道芸に関する記載部分が存在しない点を除けば実質的には本件画像1とほぼ同じ内容の画像(以下「本件画像2」という。)が表示されている。なお、同記事の2ページ目以降には、出店予定の餃子店の紹介を含む本件イベント1の詳細な情報等が記載されている。

 被告標章2は、「全国ぐっと!!」及び「餃子フェス」の文字部分が連続して一行で記載されている。文字に対する装飾の内容は被告標章1と同様である。

 (イ) 被告963は、インスタグラムの自己のアカウントにおいて、「【道の駅やまがた蔵王】様にて/#全国ぐっと餃子フェス/が開催されます!!」(「/」は開業部分を示す。)などと本文中にて告知すると共に、本件画像2ほか1枚の画像を上下に組み合わせた(本件画像2が上側)画像を掲載した。

 (ウ) 被告連盟會は、その公式ウェブサイトに「全国ぐっと!!餃子フェスin道の駅やまがた蔵王 初開催!!」と題する記事を掲載した。その1ページ目には、「数々の餃子イベントの人気店が全国から道の駅やまがた蔵王に集結!」との記載の下に、本件画像2が掲載され、2ページ目以降には本件イベント1に出店する各餃子店の紹介を含む詳細な情報が記載されている。

 (エ) 上記各記事ないし投稿のタイトル及び本文部分の記載内容並びに本件画像2の構成に鑑みると、被告標章2は、本件イベント1のイベント名として表示されたものと理解されるのであって、このほかに本件イベント1の名称を示すものとして理解し得る記載は見当たらない。

   ウ 検討

 (ア) 上記各認定事実によれば、上記各記事ないし投稿のいずれにおいても、被告標章1及び2は本件イベント1のイベント名を示すものと理解され、他に本件イベント1のイベント名を示すものとして理解し得る記載はこれらの画像には見当たらないことに加え、これらの画像のいずれにおいても餃子の画像及びイラストが大きな割合を占めていることを併せ考えると、被告標章1及び2は、需要者にとって、いずれも本件イベント1のイベント名を示すものとして理解されるものと認められる。このことに加え、本件審決が理由として示すとおり、餃子の提供を中心とするイベントの名称としては、「餃子フェス」のみでは自他役務識別機能に乏しいとみられることは論を俟たないといってよいほどであること、文字数も合計10文字(促音等を含み、感嘆符を除く。)とさほど多くなく、容易に一息で読み上げることができることに鑑みれば、「全国ぐっと!!」及び「餃子フェス」を結合した被告標章1及び2は、これらを上下二段に配した場合(被告標章1)及び一行に配した場合(被告標章2)のいずれを問わず、一連一体の標章として把握するのが相当である。

 (イ) 原告の主張について

 これに対し、原告は、「全国ぐっと!!」の感嘆符には文章を終わらせる役割があることや、「全国ぐっと!!」部分と「餃子フェス」部分の文字の装飾等の違い等を指摘して、被告標章1及び2のうち「餃子フェス」部分を抽出した分離観察により原告商標との類否判断をすべきである旨と共に、本件イベント1においては原告商標の指定役務と類似する役務である大道芸の興行や餃子に限らない飲食物の提供が行われており、これらの役務との関係では「餃子フェス」の標章も識別力を有する旨を主張する。

 しかし、「全国ぐっと!!」部分と「餃子フェス」部分とを一連一体の標章として把握すべきことは、前記のとおりである。原告商標の指定役務との関係で「餃子フェス」の標章に識別力があるとしても、そのことから直ちに被告標章1及び2の構成部分のうち「餃子フェス」部分を分離して商標の類否を判断すべきことにはならない。また、仮に分離観察し得るとしても、本件画像1の記載内容等に鑑みれば、大道芸の興行及び餃子以外の飲食物の提供のいずれも、餃子の提供を内容とする本件イベント1の集客ないし複数回来場や滞在時間の長時間化等をより促進することなどを目的とする付随的なものに過ぎないとみられるから、原告商標の指定役務と被告標章1及び2が使用された役務との類似性に疑義がある。

 その他原告が縷々指摘する事情を考慮しても、この点に関する原告の主張は採用できない。

 (ウ) 原告商標と被告標章1及び2の類否

 以上を前提とすると、原告商標は漢字及び片仮名を組み合わせた「餃子フェス」と欧文字「Gyoza Festival」を上下二段かつ左右略同一幅に書してなるものであるのに対し、被告標章1及び2は、「全国ぐっと!!」及び「餃子フェス」を、前記認定のとおり、上下二段(被告標章1。なお、左右幅は、「全国ぐっと!!」の感嘆符を除く部分と「餃子フェス」部分とが略同一幅である。)ないし左右方向に一行(被告標章2)に書してなるものであるから、原告商標と被告標章1及び2とは、外観、称呼及び観念のいずれも異なる。したがって、被告標章1及び2は、いずれも原告商標とは類似しない。これに反する原告の主張は採用できない。

   エ 小括

 以上より、その余の点を論ずるまでもなく、被告らの被告標章1及び2の使用による原告商標権の侵害は認められない。したがって、原告は、被告標章1及び2につき、原告商標権に基づく差止請求権(法36条1項)及び削除請求権(同条2項)並びに原告商標権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求権(民法709条)を有しない。

  (2) 被告標章3及び4について

   ア 被告標章3の使用状況

 (ア) 「ふくしま街なか賑わいカレンダー」のウェブページ(甲8)には、「全国ぐっと!ラーメン祭りwith餃子フェス」との見出しの下、本件イベント2に関する告知が掲載されている。当該告知においては、「3日間限定!ここでしか食べられないラーメンと餃子の最強コラボ!」との紹介文に続き、本件イベント2の広告ポスターと理解される画像(以下「本件画像3」という。)、開催日時及び場所に加え、内容について、「全国からラーメンと餃子をコラボレーションさせた特別なイベントを開催します!」などとする説明文が記載されている。

 本件画像3は、全体を赤地の背景とし、上部1/4程度の部分には「全国ぐっと!ラーメン祭り/With餃子フェス」(「With」は黒丸内に白抜き文字により記載されている。)との表示並びに開催日時及び場所の記載が配置されている。全体の1/2程度を占める中央部には、その上半分にラーメン店の出店予定店舗(7店舗)の商品イメージ及び店舗名、下半分に餃子店の出店予定店舗(8店舗)の商品イメージ及び店舗名と「アラカルト」として提供される予定のメニュー(4種)の画像が配置されている。下部1/4程度の部分には、「香川より/緊急参戦」などと付して出店予定の和菓子店の名称及び商品画像が表示されると共に、最下部に連絡先として被告963の名称及び電話番号等が表示されている。

 (イ) 被告標章3は、上記のとおり本件画像3の上部に配置された「全国ぐっと!ラーメン祭りWith餃子フェス」などとする表示の一部をなすものである。当該部分には、上段に黒色の縁取り及び影付きの装飾を施した白抜き文字の「全国ぐっと!ラーメン祭り」の表示及びその右側に黒色帯上に「3日間限定!ここでしか食べられない/ラーメンと餃子の最強コラボ!」との表示が配置され、下段には、「With餃子フェス」の表示が、「With」部分は黒丸内に細いフォントの白抜き文字により、「餃子フェス」部分は上段の「全国ぐっと!ラーメン祭り」部分と同様の装飾を施した同一サイズのフォントを使用して表示され、その右側に開催日時及び場所の表示が配置されている。

 (ウ) 上記告知のタイトル及び本件画像3の構成に鑑みると、被告標章3は、需要者にとって、本件画像3における本件イベント2の「全国ぐっと!ラーメン祭りwith餃子フェス」というイベント名の一部をなすものとして表示されたものと理解される。

   イ 被告標章4の使用状況

 岩下食品株式会社は、その公式ウェブサイトのイベント紹介記事(甲9)として、取引先が出店予定の本件イベント2を紹介した。当該記事は、「北越ぎょうざが「全国ぐっと!ラーメン祭りwith全国ぐっと!餃子フェス」で『岩下の新生姜餃子』を販売。」などと題し、「イベント概要」欄において、本件イベント2の広告ポスターと理解される画像(以下「本件画像4」という。)を掲載すると共に、開催日時及び場所等の詳細を告知している。本件画像4は、上部のイベント名称部分下段の表示のうち本件画像3の被告標章3が被告標章4に変更されている点と、中央部下段の「アラカルト」の表示の下部に、会場にて提供されるビールに関する記載が追加されている点で本件画像3と異なるものの、基本的にこれと同一の内容及び構成のものといえる。

 このため、被告標章4についても、被告標章3と同様に、需要者にとって、本件画像4における本件イベント2の「全国ぐっと!ラーメン祭りwith全国ぐっと!餃子フェス」というイベント名の一部をなすものとして表示されたものと理解されるものといってよい。

 また、被告標章4は、「全国ぐっと!」及び「餃子フェス.」の各文字部分を上下二段に書してなるものであるところ、各文字部分における文字に対する装飾及びフォントは同一であるものの、フォントサイズは後者が前者の4倍程度の大きさ(なお、本件画像4の上部上段の「全国ぐっと!ラーメン祭り」部分と同一サイズである。)とみられる。

   ウ 検討

 (ア) 上記各認定のとおり、被告標章3及び4は、いずれも、本件イベント

2のイベント名「全国ぐっと!ラーメン祭りwith餃子フェス」(被告標章3について)ないし「全国ぐっと!ラーメン祭りwith全国ぐっと!餃子フェス」(被告標章4について)の一部として本件画像3及び4に表示されたものである。また、本件画像3及び4におけるイベント名の表示の構成は、いずれも「全国ぐっと!ラーメン祭り」と「With餃子フェス」(本件画像3)又は「With全国ぐっと!餃子フェス.」を上下二段に配したものであること、下段の「With」は、他の記載と異なり、黒丸内に他と異なるサイズ及びフォントにより記載されている。これらの事情に加え、本件画像3及び4を全体としてみると、全体の半分を占める中央部に出店予定のラーメン店舗及び餃子店舗が、やや前者に重点を置いているとも理解し得るものの、ほぼ遜色ないといえる程度の重み付けにより紹介されているとみられることなどにも鑑みると、本件イベント2のイベント名については、「全国ぐっと!ラーメン祭り」部分と被告標章3又は4部分とは分離して観察することとするのが相当である。

 (イ) 被告標章3の商標的使用の有無

 前記のとおり、餃子の提供を中心とするイベントの名称としては、「餃子フェス」のみでは自他役務識別機能に乏しい。本件画像3を全体としてみれば、本件イベント2は餃子の提供を中心的な内容の1つとするイベントであるといえることから、被告標章3は、自他役務識別機能を欠く標章の使用とみるのが相当である。同じく本件イベント2を紹介する本件画像4において、被告標章3部分が「全国ぐっと!」との記載を付加した被告標章4にされているのも、この点を考慮したことによるものと推察することも十分に可能である。

 そうすると、本件イベント2に係る被告標章3は、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができる態様により使用されていないというべきであるから、原告商標権の効力は及ばない(法26条1項6号)。

 (ウ) 原告商標と被告標章4の類否

 前記のとおり、被告標章4は、「全国ぐっと!」及び「餃子フェス.」の各文字部分を上下二段に配し、各文字部分の文字に対する装飾及びフォントは同一であるものの、フォントサイズは後者が前者の4倍程度の大きさのものである。もっとも、餃子の提供を中心とするイベントの名称としての「餃子フェス」部分の自他役務識別機能の乏しさ(「餃子フェス」に「.」が追加されたことのみでは、この点の評価は異ならないとみられる。)に鑑みると、このような構成を考慮してもなお、「全国ぐっと!」部分と「餃子フェス.」部分は一連一体の標章としてみるのが相当である。

 そうすると、原告商標と被告標章4とは、外観、称呼及び観念のいずれも異なるものである。したがって、被告標章4は、原告商標とは類似しない。

 (エ) 原告の主張について

 これに対し、原告は、本件イベント2では餃子以外の飲食物の提供が行われており、このような役務との関係では「餃子フェス」の標章も識別力を有する旨を主張する。しかし、被告標章1及び2と同様の理由から、この点に関する原告の主張は採用できない。

   エ 小括

 以上より、その余の点を論ずるまでもなく、被告らの被告標章3及び4の使用による原告商標権の侵害は認められない。したがって、原告は、被告標章3及び4につき、原告商標権に基づく差止請求権及び削除請求権並びに原告商標権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求権を有しない。

第4 結論

 よって、原告の請求はいずれも理由がないから、これらをいずれも棄却することとし、主文のとおり判決する。

 東京地方裁判所民事第47部

 (裁判長裁判官 杉浦正樹 裁判官 池田幸子 裁判官 松尾恵梨佳)

 
 
 

コメント


bottom of page